アイスランドで性差別撤廃を要求して女性のストライキ、首相も参加
10月23日のニューヨーク・タイムズやガーディアンなどが「女性差別が最も少ないとされるアイスランドで、公務員労組が50年来職場に残る女性や中性者への差別撤廃を要求して24日、一日ストを展開する」と報じた。
ストライキを主導するのはアイスランド公務員労組連合会で、責任者のスタイングリムスドッター氏は「アイスランドは男女平等の天国と見られているが、その期待に応えるには未だ問題山積だ。完全な平等を実現する義務を負う」と言明する。
これについてヤコブスドッター首相は「スト対策の閣僚会議は招集しない。反対に女性閣僚にはストライキに参加してほしい」と同感を表明、こうして漁業関係、教員、看護師、そして首相などの多くの女性がストライキに参加した。
要求には賃金平等と並んで性的暴力撲滅があるが、性的暴力問題に取り組むカウンセル・センターでは「性差別撤廃の闘いで暴力は減らなかった。女性の社会的地位と賃金の低さには相関関係があり、女性の価値が低く見られることと女性への暴力とはリンクする。全女性がストに参加すべきだ」と語る。
こうしたストライキは過去数十年で7回目だが、完全な一日ストは25,000人が参加した1975年以来の事で、当時は学校や劇場、国営航空などで行われた。
世界経済フォーラムの7月の「世界性的差別報告」によると、アイスランドは過去14年間最高得点を獲得している。2018年には各企業や政府機関に対し男女平等賃金の証明を義務付ける法律を制定した。しかし差別は残り、会社上級役員の男女数や給与の格差は2021年から拡大して、2017年当時に落ち込み、男女間の中位賃金額も21%に拡大している。
また、アイスランド大学の2018年調査では、女性の健康被害について女性の4分の1がレイプや性的暴力の経験を持つと報告された。
家事や子供の世話については他国と同様に、女性の方が心身ともに負担割合が圧倒的に大きく、一部は外部に頼むにしても、これが無くならなければ完全平等は無理とも言われる。また伝統的に女性の仕事とされる清掃や世話仕事も低位に見られ、報酬も低い。
他方、OECD調査ではアイスランドの男女賃金格差はベルギーやイタリアよりも大きい。しかし、英国、ドイツ、米国、日本よりは遥かに良い。また欧州の性的平等性は世界で最も高いとされる。
今回のストライキにより、病院では救急以外の一般医療に大きな影響が予測され、女性の多い学校では授業時間の短縮、放送局でもスト参加の影響が出ると言われる。
スト指導者はスト参加を妨害する企業名を報告するよう要請、その名前を公表するとしている。一方、賃金全額を保証してストライキに協力する企業も多い。
ストライキが性差別についての国民認識を喚起するうえでの良い機会となるが、1975年以来50年間の歴史の中で、進歩が余りにも遅いと指摘する人も多い。