国際港湾倉庫労働組合が破産法による保護を申請
10月1日の海事行政ニュース、2日のウオールストリート・ジャーナル、7日のロサンジェルス・タイムズなどが標記ニュースを次のように報じた。
1週間前、米国西海岸のロサンゼルスやロングビーチなど29港湾に組織を持つ国際港湾倉庫労組(ILWU米国・カナダに4万名)は港湾各社を代表する太平洋海事協会(PMA)との間に22,000名の組合員に対する6年協約を改定した。
2022年に期限切れとなった前協約では、組合員の平均年収が195,000ドル、健康保険などの諸手当が102,000ドルであったが、新規協定では2022年から6年間で賃上げ32%、パンデミック時の労働に対する7,000万ドルのボーナス、オートメーションに伴う人員削減にも一定の合意を得るなどの成果を上げた。
その労働組合が2011年の労働争議における不当労働行為を理由とする巨額の損害賠償に耐えきれずに、破産法による保護を申請した。破産法第11条は「再編破産」とも言われるが、損害賠償を認めながら事業の継続を可能にする条項である。
この点について、同労組のアダムズ会長は「破産法申請を通じてこの問題の解決と労働組合の仕事を継続してゆきたい」と述べながら、港湾会社からの訴訟には耐えきれないことを明らかにした。
発端となった問題はオレゴン州ポートランド港での冷凍コンテナヤードの操業をリース契約した国際コンテナ・ターミナル・サービス社(ICTSIフィリピン本社)における2名の従業員から起きた。その2名はそれまで国際電機友愛労組(IBEW)が代表していたが、ILWUはその移籍を要求、しかし同社は仕事がポートランド港湾の管理下にあるとして拒否した。ILWUはその後、数年にわたり陸揚げ作業の妨害などを行ったとして会社は労組の不当労働行為を非難、その間海運各社もポートランド港への荷下ろしを停止した。かくしてICSTI社はポートランド港に2,000万ドルを支払ってリースの解消をし、訴訟に持ち込んだ。同社は損害額が4,200万ドルから1億4,200万ドルに上ると申し立てている。
連邦地裁はILWUの不当労働行為を認めて9,400万ドルの損害賠償を認定、その後金額は1,900万ドルに減額されたが会社側はこれを拒否、次回裁判は来年2月に予定されている。
ILWUによると組合資産は1,160万ドルであり、到底支払に耐えないとされる。
こうした推移について労働専門家は「企業が労働組合に対して法的に付け入るスキを見つけると、企業は訴訟を続けながら、労働組合の破産や弱体化を狙う先例を造ってしまった。厳しい賠償額にも困惑を感じる」と述べている。