トランプ前大統領がミシガン州の非組合部品企業を訪問
9月27日のニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどが「昨日のバイデン大統領によるUAWピケット参加者による集会に続いて、本日、トランプ前大統領は共和党予備選の討論会を欠席して、ミシガン州の非組合自動車部品企業を訪問、自動車労働者の支持を呼びかけた」と報じた。
トランプ前大統領はその訪問でUAW要求には触れずに、一般労働者に直接訴える形で「バイデンの電気自動車(EV)政策は自動車産業の雇用を奪うものだ。自動車産業を滅亡させないために私を支援するよう指導部に訴えて欲しい。その後は私に任せなさい。バイデン政策が実行されれば、自動車の雇用は3年でなくなる。私になれば今迄以上の雇用と賃金水準を実現する」として従来の主張を繰り返し、「ウォールストリートや中国の嘘つき、汚職政治家が皆さんを傷つけてきた。外国による略奪で奪われた希望や夢、遺産を取り返す時が来た。その金や工場を取り返し、産業基盤を再建する。トランプ大統領への一票は自動車の将来がメイド-イン-アメリカということだ。アメリカのエネルギー、資源、熟練と高賃金の労働者があれば築くことが出来る。就任初日に法案に署名する」と述べた。
トランプ氏はUAW労働者を支援するとしつつ、労働組合の正式承認を要求、「EV移行は米国産業の生死に関わる問題だ。地球温暖化対策の排ガス規制は自動車雇用とは両立しない。政府政策は皆さんの雇用、自動車産業を暗殺するものだ。組合指導者はEV政策を止めさせることが必要だ。労使交渉でどのような成果を上げようとも、仕事が2-3年で仕事がなくなるなら、意味がない」と述べた。
トランプ氏はこの日行われた共和党予備選討論会を欠席して、デトロイト北部のクリントン町、ドレーク・エンタープライゼズ部品会社(150名)を訪問したが、支持率の低い共和党他候補は無視して、バイデン大統領に直接戦いを挑んだと言える。この会社集会には同社従業員だけでなくUAW組合員とする数名の姿も見られた。
他方、UAWフェイン会長は2019年のGMストにはトランプ支援はなかったと批判しつつ、トランプ氏と面談する積もりはないと言明した。トランプ氏は指導部と一般労働者を分断する方針だが、2020年選挙ではUAW組合員家族から37%の支持を得たとされる。
UAWは電気自動車への移行は不可避だとしながらも、EVが労働組合員により生産できる環境整備を要求しているが、EV移行に伴う不安定な環境がトランプ氏に付け入るスキを与えている。
訪問先の部品企業のステンプル社長は「EV移行は当社が生産するギアシフト・レバーを不要にする。急速な製品転換には付いてゆけず、倒産しかない」と苦悩を語る。
自動車雇用についてのトランプ前大統領の実績は就任初年度こそ増加したが、その後、横這いから減少に転じた。他方、バイデン時代の雇用は常にトランプ実績を上回っている。
また、トランプ氏が言う「EV移行は中国に雇用を移転する」との主張には、労働環境団体から「バイデン政策はアメリカ産業を刺激して雇用を中国からアメリカに引き戻そうとするものだ」との反論がある。