ナイジェリア労組のスト圧力で大統領が引き締め緩和を表明
7月31日付のワシントン・ポスト(WP)、ザ・ケーブル(TC)、26日付のデイリー・ポスト(DP)などが標題の記事を掲げ、ナイジェリアのボラ・ティヌブ新大統領の経済引き締めに反対するナイジェリアの労働組合のストライキを報じている。
去る5月の総選挙で就任したティヌブ大統領(元ラゴス州知事)は幾つかの経済政策を打ち出す中で、財政を圧迫してきた数十年来のガソリン補助を打ち切った。理由は富める者を利するだけというものであったが、実際にはガソリン価格を倍増させ、食品など日常品価格の高騰を招いた。
大統領は補助金廃止で1兆ナイラ(11億ドル)以上の節約ができたとしながらも、国民生活には強い痛みであったと認めつつ、従来の補助金が一部特権階級を利するものだったと強調、国民生活の痛み軽減の諸施策を今から来年にかけて実施すると表明した。
ナイジェリアでは2億1千万人の国民の多くがインフレと貧困に苦しんでおり、多くの企業倒産、交通費が出せない多くの労働者の徒歩通勤が見られる。各病院でも医師たちが生活改善を要求してストライキを行う中、労働組合は8月2日にゼネストを予告、多くの労働組合員がサラリーの70%を交通費に使わねばならない現状を訴えている。
その中心となるのがナイジェリア労働会議(NLC)と労働組合会議(TUC)だが、大統領関係者との協議を急いでおり、大量交通機関、圧縮天然ガス、金融の3委員会からの報告を審議している。
大統領は対策の遅れを認めながらも「連邦政府は各地自治体との協力を急いでおり、今少し我慢してほしい」と発言、対策として10億ナイラ(116万ドル)の75製造企業への来年度補助金、1.250億ナイラ(1億4,500万ドル)の民間中小企業への助成金、食品価格安定には20万トンの穀物放出、農家には22万5千トンの肥料と種苗など、その他、農業全体には生産増強のために2,000億ナイラ(2億3,200万ドル)を投資すると説明した。また公務員については新たな給与体系を交渉すると発言している。
日本外務省資料によると、ナイジェリアの人口、GDP規模はアフリカ最大であり、サービス産業の成長が顕著など市場の潜在性が高い。他方、国家歳入の7割、輸出の8割を原油に依存、経済の多角化が課題であり、コロナ禍の原油価格下落からは、回復傾向が見られるが、不安定な電力供給、通貨政策の混乱、そして民族や宗教対立、イスラム過激派のボコ・ハラムによる治安問題を抱えているとされるなどの課題があるとされる。