電気自動車移行に120億ドルの政府援助
8月31日付のニューヨーク・タイムズ、CNNニュースなどが「米国エネルギー省は自動車メーカーが現行工場をハイブリッド及び電気自動車(EV)工場に転換する場合、20億ドルの助成金と100億ドルの借款を用意すると発表した」と報じた。
資金は2022年インフレ軽減法に盛られた予算で、自動車産業の雇用を守るものだが、全米自動車労働組合(UAW)の協約改定交渉へも対応すると言える。UAWはEV生産が齎す雇用減少へのバイデン対策を不満としており、自動車各社がEV工場を労働組合の無い南部諸州に新設している現状の中、次期大統領選挙へのバイデン支援を保留している。 また、9月期限の協約交渉では97%の圧倒的多数でスト権を確立している。
こうした中で発表された今回のエネルギー省政策は労使双方の懸念を和らげると見られ、バイデン大統領も「バイデノミックスの下でのクリーン・エネルギー経済は米国経済の基軸である自動車労使の双方にとってウイン・ウインの機会となる。今回の資金対策は国内の自動車雇用を拡大し、工場閉鎖を回避して高額賃金のもと、同じ工場、同一地域において機械工具やロボットの更新、再雇用を可能にする」と言明した。
政府はまたこれに加えて、今年末までにEVバッテリーとその原材料生産に35億ドルを助成するが、予算は2021年インフレ削減法に計上されている。
この点、経済専門家は「資金規模は労使の懸念を鎮めるのに十分な金額であり、EV工場の雇用を労働組合ものとする意図が明確だ。ただ消費者が政府の目論見通りにEV購入に走るかどうかは、これからの課題だ」と評価する。
フェインUAW会長も政府の資金供与を歓迎し「政府は良質雇用かグリーンな雇用かとした誤った選択を捨てた。またEV移行について会社側には、UAWが数十年かけて獲得してきた高賃金と安全基準を伴う労働組合との強いパートナーシップが必要だと言う事を明確に示した」としつつも、「今回交渉で会社は未だに雇用の保証を約束していない。工場閉鎖された各地でUAW組合員が路頭に迷っている」と糾弾した。
他方、会社のロビー・グループである”自動車革新アライアンス”も資金投入を歓迎し、「今進めているEV投資に大きな助けとなる」と表明した。
バイデン政権は温暖化対策として、現在7%のEV新車販売を2032年までに3分の2に引き上げる目標を示しているが、地球を温暖化させる自動車排ガスの3分の1は米国から出されているとされる。しかし自動車労使双方は政府による従来の排ガス対策が企業や消費者への金銭負担を大きく増加させると批判してきた。