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カリフォルニア州議会がスト労働者に失業保険の給付を審議

2023.09.22掲載

8月23日付のニューヨーク・タイムズ、28日付のジャーナル・レコード(JR)が「カリフォルニア州議会でストライキ労働者への失業保険給付が審議されている」と報じた。

カリフォルニア州では今年、映画脚本家、家政婦、学校清掃労働者などがストライキを行っているが、民主党優勢の同州議会は議会末になって標記の議案を上程した。
法案を後援するのはカリフォルニア労働連合会(CLF)だが、5月に始まった脚本家組合、7月からの俳優組合、同州南部のホテル労働組合のストライキを支援する意味もある。

法案はスト突入2週間後に失業保険給付を開始する内容だが、現行では、スト労働者に保険受給の権利はなく、自分の貯金か労組積立てのストライキ基金に頼るしかない。法案実現は賃金労働条件改善への大きな力であり、長期ストにも耐えられる。ただし実施は来年1月以降となる。なお、ストライキ労働者への失業給付を認めている州にはニューヨーク州とニュージャージー州があり、そこに居住する脚本家や映画俳優は給付を受けている。

多くの労働者がコロナ災禍以降、インフレも加わって家賃や日常品価格が高騰する中、会社への依存を強めてきた。CLFゴンザレス会長は「労働者は生存をかけて労使交渉を行う。AIへの対処も脚本家たちには生死の問題だ」と語る。
ゴンザレス会長は2019年当時、民主党州議会議員として同様の法案を廃案にされた経験を持つが、今回は給付内容を改定、ホームレスや生活補助に頼ることがないよう、給付金額を週最高450ドルに引き上げた。

これに対し実業界は労働コストの増大に強く反対、9月14日の審議期限までの廃案を目指しているが、こうした労使対立は過去幾度となく繰り返されてきた。民主党が圧倒的多数を占める議会でも主要議員の中には実業界寄りの議員も存在して支援撤回の可能性もあり、最終承認のニューサム知事にも実業界への配慮を判断する可能性がある。

カリフォルニア商業会議所では「スト労働者への失業保険給付は労使対立の無い企業にも高額課税を強いるなど、不当に経営を罰する」と述べ、「州失業基金はパンデミック当時、既に破産状態にあった。そこに連邦政府からの借入200億ドルが導入されたが、それでも今年10億ドル赤字の状態にある」としつつ、「任意のストライキと不本意な失職とは基本的に異なる」と指摘する。

しかし脚本家組合や俳優組合は、法案が危機的な必要性を獲得する助けになるとして、「ストライキを好んで行うのではない。これは最後の手段だ。経営者が公平な取り引きを拒否する中で、こうした状態に追い込まれた労働者が保険給付を受けられないという罰則があってはならない」と主張。法案提案者の上院議員などは失業保険基金健全化への失業保険給与税の増額を唱えている。

ジャーナル・レコード(JR)によると、「労働組合は失業保険への企業負担の軽さを問題視している」と言われる。
同州の失業保険税は従業員年収の最初の7,000ドルが対象金額で、それも連邦法最低の金額水準にあり、1984年以来の変更がない。その中で保険給付金額が1969年と2001年とに改訂されて、それが赤字の原因とされる。
失業保険税課税の対象金額が7,000ドルに止まる中、民間のフルタイム従業員の平均年収は67,000ドルに増加し、企業負担は年々軽減されている状況にあるとされ、さらに、連邦ローンについて、大部分の他州ではパンデミック当時に増大した失業対策給付に充てられたが、カリフォルニア州では企業負担軽減に使われた」とされている。