パキスタンPWF/JILAF労使関係セミナー
国際労働財団(JILAF)は、パキスタン労働組合連盟(PWF)との共催で、6月22日~23日にパキスタンのラホール市、6月25日~26日にカラチにおいて、労使関係セミナーを開催しました。同セミナーには、全国の労組指導者など73名が参加しました。
労使関係セミナーの開会式では、JILAFを代表して、相原理事長がPWF定期総会で選出された新役員に対して祝意を示すとともに、「働くひとたちの幸せをつくることはPWFとJILAFの共通財産である。経済団体やILO等とも連携しながら、より良い社会をつくっていこう」と挨拶しました。
PWFからは、ワカール・メモン事務局長が、パキスタンで起きた直近の重大労働災害の事例を引き合いに出しつつ「職場の環境改善に対するニーズが高まっているものの経営者の関心は非常に低いため、同プログラムを導入して労使対話の構築に繋げてほしい」と強調しました。なお、ラホールの開会式では南アジア地域労働組合評議会(SARTUC)のラックスマン・バスネット事務局長(元ネパールNTUC会長)も駆けつけ、ネパールで実施した同プログラムが組織化にも有効であることを補足しつつ、同プログラムへ強い期待を寄せました。
カラチのセミナーでは斉藤事務長が、ラホールのセミナーでは加藤プログラムマネージャーがそれぞれ「日本の労働運動の歴史と役割」と題して、①日本の労働組合を取り巻く状況、②日本の労働運動の歴史と役割~建設的労使関係構築の道のり~、③日本における今日的課題―――について概説し、参加者からは、労働組合と政治の関与のほか、組合の登録方法や労働政策審議委員の選出方法、女性比率の向上に向けた取組み等について質問が出されました。
両セミナーの技術セッションについては、長須専門家が、参加者との対話を重視する参加型の手法にて、①参加型アプローチプログラムの紹介、②チェックリスト実習、③労働安全衛生マネージメントシステム、④物の運搬と保管、⑤ワークステーションチェンジ、⑥作業場環境、⑦福利厚生とチームワーク・環境保護、⑧経営側への改善提案の方法、⑨ビジネスと人権―――等についてファシリテートしました。
参加者はジェンダーバランスを考慮しつつ若手の組合活動家を中心に構成されましたが、読み書き等の教育レベルが低い参加者も散見されたものの、過去の職場環境改善プログラム「POSITIVE」のトレーナーが若手のサポート等を自主的に行った結果として、各技術セッションのグループ討議・発表等は円滑に実施されました。
過去のトレーナーからは「とりわけ鉱山現場で重大災害が多発しており、トレーナーに対する再教育または若手のトレーナー育成に注力していきたい。今は、古い鉱山向けアクションチェックリストを使用しているが、現場で使用している機械や作業環境も大きく変わってきているため、マニュアル等の刷新が必要である」等の意見も寄せられました。
最後に、閉会式では、PWFのワカール事務局長が、ラホールとカラチでの各2日間のセミナーを振り返った上で「改めて職場環境改善プログラムの有効性を感じた。すでに亡くなったトレーナーも数多くいるため、今後は若手を中心にトレーナー再教育していきたい。特にマニュアル策定などは専門的知識も必要なため、今後JILAFに協力を求めていきたい」と訴えました。これを受け、相原理事長は「セミナーにおける参加者のパフォーマンス等を見て、職場環境改善プログラム実施の必要性とパキスタン労働運動の明るい未来を確信した。その期待に応えられるよう、来年度も引き続き支援をしていきたい」とセミナーを締めくくりました。