インドINTUC/JILAF労使関係セミナー
国際労働財団(JILAF)は、インド労働組合会議(INTUC)との共催で、7月17日~18日にインドのアンドラ・プラデシュ州ビジャヤワダ市において、労使関係セミナーを開催しました。同セミナーには、同州の労組指導者など34名が参加しました。
開会式では、大野グループリーダーがこれまでのINTUCとJILAFの協力関係に触れつつ「労使で協力して安全衛生の取組みを推進することは労働組合にとって重要な活動である。プログラムは技術的な内容だけでなく、グループ討議やゲーム等も交え、インタラクティブに職場環境改善手法を学ぶ内容であり、多くの気づきを得てほしい」と挨拶しました。
インド側からは、INTUC アンドラ・プラデシュ州のクランティ・クマール事務局長が「JILAFの職場環境改善プログラムは安全衛生の改善のみならず、生産性向上にも寄与する。セミナー受講後に各職場で労使対話を開始してほしい」と述べました。また、経営側を代表して地元ITC(食料品製造・販売会社)の労使代表も同プログラムへの期待を表明しました。
次に、加藤プログラムマネージャーがJILAFの活動紹介をした後「日本の労働運動の歴史と役割、今日的課題」と題して、①日本の労働組合を取り巻く状況、②日本の労働運動の歴史と役割~建設的労使関係構築への道のり~」、③日本における今日的課題――について概説し、参加者からは、連合の組織体制や春闘について質問が出されました。
続いて、長須専門家が「参加型アプローチによる職場環境改善活動」と題して講演。具体的には①チェンナイで行った職場環境改善プログラムの成果(改善写真や調査結果の分析など)、②ヨルダンで実施した労働者参加によるポスター作り活動、③レバノンで実施したUNIDO(国連連合工業開発機関)による家具職人のための活動――を説明しました。その後、参加者は壁に貼りだした様々な職場の写真を見ながらチェックリスト演習を行い、ローコストな良好事例等に着目したグループ討議と発表を行いました。
プログラムの各技術領域については、長須専門家がファシリテートしながら参加型手法で講義・関連ゲーム、グループ討議や発表の順で進行。「物の運搬と保管」の技術領域については、エッグキャリーゲームを行った後、①安全な通路を確保すること、②資材や道具の置き場所、置き方を安全で効率的にすること、③運搬と移動は少なく、短く、安全にすること、④重いものを運ぶのは出来るだけ少なく効率的にすること――について学びました。
2日目は「ワークステーションチェンジ」の技術領域から始まり、色鉛筆ゲームを行った後、①工具や材料は作業者の近くに置くこと、②作業はひじの高さで行うこと、③手や足が常に安全なように防護すること、④表示や操作盤は分かりやすくすること――について理解を深めました。
「有害作業環境の改善」の技術領域では、①良い照明を使うこと、②熱さと寒さから作業者を守ること、③騒音がコミュニケーション、安全を妨げないことを確かめること、④粉じん、化学物質など有害物質から作業者を守ること――について学びました。
「福利厚生・チームワークと環境保護」の技術領域では、キャッスルゲームを行った後、①作業分担を見直してよいチーム作業にすること、②休暇・休日を含む勤務時間制の改善や残業管理で過労を防ぐこと、③掲示やミーティングで情報を共有すること、④トイレや休憩室など福利施設を整えること、⑤職場内の相互支援を進めること――について理解を深めました。
経営者への最終的な計画案を各グループで策定し、労働者と労働組合が労働安全衛生を推進するために何ができるかをそれぞれ議論しました。クマール事務局長を工場の責任者に見立てて、参加者が最後に3つの良い点と改善提案を行いました。
「ビジネスと人権」に関する現地のニーズ把握のために、同テーマのポストイット投票を実施。「ディーセントワークの推進」、「障がい者、女性、LGBTQなど法の平等」、「AI・インターネット・SNSなど新しい技術発展に伴う人権」のニーズが高く、具体的な行動計画を策定しました。
閉会式では、クマール事務局長が「本セミナーはトレーナーを養成するためのプログラムでもあるため、各職場にて1日の職場セミナーを実施し、フィードバックしてほしい」と参加者を激励しました。これを受け、大野グループリーダーは「改善活動の継続的なフォローアップや実施を行い、労使関係の改善や労働災害の減少につなげてほしい」と述べ、2日間の労使関係セミナーを終了しました。