モンゴルCMTU/JILAF労使関係・労働政策(IR)セミナーの開催
国際労働財団(JILAF)は、8月1日~2日および4日~5日にモンゴル労働組合連盟(CMTU)との共催で、モンゴルのウランバートル市とアルハンガイ県ツェツェルレグ市において労使関係・労働政策セミナーを開催しました。同セミナーには、各県組織代表者ならびに各加盟組織リーダー他130人が参加しました。
セミナーでは冒頭、CMTUエルデネバト会長、JILAF元林常務理事および在モンゴル日本国大使館市岡一等書記官が挨拶を行い、本セミナーの主旨・目的等を参加者全員で共有しました。
講義では、まずエルデネバト会長が“経済と労働市場の公正な回復のための労働組合の役割”と題し、モンゴルでは雇用や労働関連の問題が優先課題として認識されておらず、労働組合としてさらに役割を発揮するためにも①ディーセントワークの実現、②職場の安全衛生と労働者の健康改善、③組織化、④人財育成と労使関係の改善、⑤CMTUのリソースの最大限の活用、等を活動の柱として取り組む必要があることを強調しました。
また、改正労働法について、改正の特徴点として労働法の範囲を遊牧民等のインフォーマルセクター労働者に拡大、暴力やハラスメントの禁止を明記、労使紛争の解決方法等が明記されたことを紹介し、今まで以上に労働組合が果たす役割と責任が大きくなったと説明しました。
つぎに、JILAFからは元林常務理事が、①日本の労使関係と安定雇用、②コロナ禍における日本の労働組合の役割と課題、をテーマに講義し、①では日本の労働運動や労使関係の特徴として、“日本の労働運動の歴史”、“日本の労働組合の機能と役割(春闘、生産性運動や労使協議等)”、“日本の三者構成システム”について概括的に説明した後、COVID-19の雇用への影響を最小限に留めるための労働組合の対応や政府の対応について説明しました。
2日目は、モンゴル経営者連盟(MONEF)ガンバータル会長が“良好な労使関係構築に向けた社会対話の促進“として、「改正労働法により、政労使の三者協議の役割がさらに重要になった。かつては三者協議で対立する場面が多かったが、今では法律に明記できるほどに関係が成熟してきたと評価している。これは大変な進歩である。経営側の環境はかつてないほどに厳しく、この状況が続けば倒産する中小企業は増える一方だ。経営者として職場の確保のために最善を尽くすが、そのためにも労使が同じテーブルにつき、建設的に協議する仕組みを構築し、共に成長していく必要がある。」と訴えました。
次に、ウランバートルでのセミナーでは各産業別組織から、また、アルハンガイ県でのセミナーでは近隣5県の代表者等から、それぞれの組織の活動状況や課題について報告を受けました。各産別からは、雇用維持の取り組みについて報告があった一方、中国の国境封鎖やウクライナ危機を原因としたインフレ(2020年:2.3%、2021年:13.4%、2022年:16.2% ※CMTU資料より)に対応する賃金上昇をどのように実現すればよいかについて課題認識の表明が相次ぎました。また、各県からの報告では人財育成、財政改善、職場の安全衛生や組織化等の多岐にわたる報告がありました。特に組織化については、小売店の店主や遊牧民等のインフォーマルセクター労働者の組織化と社会保障制度への加入促進に関する事例等が共有されました。
閉会式では、CMTUを代表してブヤンジャルガル事務局長から、JILAFおよび日本国政府の協力への謝辞とともに、「CMTUの基本方針と日本や各組織の好事例を上手く結びつけて、それぞれの組織で復興に向けた具体策を検討・実施してもらいたい」。との挨拶があった。
JILAFからは元林常務理事が、「みなさんが建設的な労使関係、政労使関係の構築に向けて懸命に取り組んでおられることが実感できた。課題はたくさんあるかもしれないが、引き続き、自分たちの活動に自信を持って取り組んでいただきたい。今後もCMTUと連携して取り組んでいきたい。」と挨拶し、セミナーを終了しました。