インドネシアCITU/JILAF労使関係・労働政策(IR)セミナーの開催
国際労働財団(JILAF)は、8月29日~30日および31日~9月1日にインドネシア労働組合総連合(CITU)との共催で、インドネシアの中央ジャカルタ市とバンテン州セラン市において労使関係・労働政策セミナーを開催しました。同セミナーには各加盟組織リーダー他60人が参加しました。
セミナーでは国歌と組合歌斉唱の後、JILAF矢木専務理事およびCITUラミディ事務局長が挨拶を行い、本セミナーの主旨・目的等を参加者全員で共有しました。
講義では、まずラミディ事務局長から“インドネシアにおける労使関係と労働組合の現状”と題し、「インドネシアの平均賃金はASEANの中でも低位にあり、約700万人の失業者を抱えている。社会保障の加入率も低く、現状は、安定雇用なし、安定収入なし、社会保護なしという状況にある。そのような中、労働組合の組織率は低下傾向にあり、2021年時点で組織率は12%台、特にCITUの組合員数は2017年の約178万人をピークに、現在は約60万人にまで減少している。」としたうえで、今後の5年間の重点目標として①賃金の上昇、②社会保障の充実、③組織拡大、④若者参画、等を優先に取り組むことが語られました。
続いて、矢木専務理事が①日本の団体交渉と労使協議について、②連合の組織化の取り組みについて、③連合の「Wor-Q」を中心とした曖昧な雇用への対応について、講義を行いました。参加者からは、労働条件が切り下げられそうな状況下で労組としてどのように団体交渉に臨めばよいか、労使協議と団体交渉への労力のかけ方、連合と日系企業労使との連携の有無、等について質問があり適時回答しました。
その後のパネルディスカッションでは“強い労働組合に向けて今何をすべきか”をテーマに使用者団体、労働組合、JILAFそれぞれが発言しました。特に、インドネシア使用者協会(APINDO)の代表者は、数年前にJILAF本部を訪問し意見交換した経験を披瀝しながら、「オムニバス法に基づいて雇用を創出する必要がある。オムニバス法は労働者にとっての不利益変更ばかりではなく有益な変更も含んでいる。今後はオムニバス法の効果の有無、すなわち投資や雇用の推移を政労使でしっかりチェックしていくべきだ。同時にオムニバス法に捉われない企業レベルの労使協議で労働協約を結ぶことが重要。労使間で経営計画の段階から労使で話し合い、利益やその分配まで決めていくことを日本で学んだ。とにかく企業レベルの二者協議態勢を構築することと、そのための啓発活動が重要で、これは労働者
側だけでなく、経営者側にも啓発が必要である。労働組合の活動には使用者側にとっても一部メリットがある部分があるので、そこを強調してキャンペーンすべき。」と発言しました。
2日目は、CITUが“全ての労働者の権利としての労働者保護と社会保障へのアクセス“について、社会保障制度の現状として、インフォーマルセクター労働者の加入率は0.2%、フォーマルセクター労働者の加入率でさえ38.5%に留まっており、労働組合として、制度設計の不備や改善に向けた政労使協議への積極的な参画はもちろんだが、労働者への啓発についても取り組んでいく必要があることを強調しました。
また、“労働組合が女性や若年労働者を組織化する意義”については、CITU加盟産別の代表者が講義し、組織化の目的・ポイントについて、ILOの中核的労働基準にも触れつつ「組織化とは単に組合員数を増やす取り組みを指すのではなく、既存の組合員を含め、全組合員を活性化させることである。特定の人だけが幹部として組織を動かし続ける状態は活性化とは遠い。今の幹部は次の世代を育てるということを常に意識しないといけない。また、民主的な組織とは差別をしない組織である。女性の組織化のためには女性保護に関する労働協約の締結が重要。女性の問題は女性だけの問題ではない、ということを認識することが必要。」と訴えました。
閉会式では矢木専務理事が「学んだことをぜひ職場で活かしてほしい。建設的な労使関係は一朝一夕でできるものではないが、ぜひともみなさんの努力で実現させてほしい。」と挨拶した後、CITUアリ副会長が「インドネシアにおける労働者の地位は低下している。労使関係の構築や組織化、それ以外の取り組み含め、各単組が創意工夫して活動を盛り上げてほしい。」と挨拶し閉会を宣言しました。