インドINTUC/JILAF労使関係セミナーの開催
国際労働財団(JILAF)は、12月20日~21日にインド全国労働組合会議(INTUC)との共催で、インドのチェンナイ市において労使関係セミナーを開催しました。同セミナーには、全国の労組指導者など62名が参加しました。
開会式では、冒頭INTUCタミルナドゥ州のジャガナダン会長が「日本とインドの労使関係は大きく異なるが、日本の労使関係の経験やJILAFのプログラムから学ぶことは多い。今回は実践的なトレーニングもあり、現場レベルの労使関係改善につなげてもらいたい」と挨拶。次に、矢木専務理事が長年のINTUCとJILAFの協力関係に触れつつ、「建設的な労使関係の構築が、COVID-19の影響も含め、困難な状況にある労働者の雇用安定や労働者の権利保護などを通じたディーセントワークの実現と社会・経済の発展に結実することを期待する」と述べました。続いて、在チェンナイ日本国総領事館の小田川領事が、前職における自身の労働組合経験を披歴しつつ、「セミナーを通して労使紛争を未然に防止できるよう努めてほしい」と挨拶をしました。
開会後は、ジャガナダン会長がプログラムのオリエンテーションを行い、その後、JILAFの加藤プログラムマネージャーがインドの現地事業を中心にJILAFの活動紹介を行いました。
次に、矢木専務が「日本の労働運動の特徴」と題して、①日本の労働組合組織の構造、②労使交渉の実際、③政府・国会との関係、④連合の組織体制と組合費、⑤労働生産性運動と労使協議制制度について概説しました。
続いて、インドの二輪自動車メーカーであるTVSモーターのジェイソン副社長から、同社の組織概要のほか、経営側から見た労使関係について説明がありました。同社の労使関係は非常に良好であり、本セミナーにも7名の参加者を派遣。同氏は、安心して働ける職場をめざし、労使の信頼関係を重視してきた点について強調しました。
1日目の最後は「建設的な労使関係の構築に向けて」と題してグループ討議を実施しました。①安全で安心な職場環境を確保すること、②組合も生産性向上の取組みに協力すること、③COVID-19の対応として労使で福利厚生を充実させることなどが論議されました。
2日目は、タミルナドゥ州INTUCのムルゲサン会長代理が、組合の視点から見たインドの労使関係について報告しました。とりわけ、賃金交渉において組合は説得力のある根拠を示す必要があること、組合員との対話を重ねることの重要性について訴えました。
次に、長須専門家が「参加型アプローチによる職場環境改善活動」と題して講演。具体的には①チェンナイで行った職場環境改善プログラムの成果(改善写真や調査結果の分析など)、②ヨルダンで実施した労働者参加によるポスター作り活動、③レバノンで実施したUNIDO(国際連合工業開発機関)による家具職人のための活動を説明しました。
続いて、壁に貼りだした様々な職場の改善写真を見ながらチェックリスト演習を行いました。参加者は、ローコストで生産性向上につながる良好事例に着目したグループ討議と発表を行いました。
その後、長須専門家が安全衛生マネージメントシステム(OSHMS)とCOVID-19の対応について解説。労働災害を減らし、安全衛生を継続的に改善するためには、事業所で安全衛生ポリシーを策定し、従業員が参画できる環境を確保することが重要であると述べました。
最後に、加藤プログラムマネージャーが職場環境改善の技術領域である「資材の運搬と保管」を解説。その後、グループ討議と発表を行いました。チェンナイの改善事例なども提示し、労働者が容易で安全に資材を運ぶことにより不要な労災が防止できることを強調し、2日間の労使関係セミナーを終了しました。