ネパールITUC-NAC/JILAF労使関係・労働政策(IR)セミナーの開催
国際労働財団(JILAF)は、12月21日~22日に国際労働組合総連合ネパール加盟組織協議会(ITUC-NAC)との共催により、ネパールのカトマンズにおいて労使関係・労働政策セミナーを開催しました。同セミナーには各加盟組織のリーダー他69人が参加しました。
開会式ではILOネパール事務所、GEFONT、ネパール使用者連盟(FNCCI)の各代表、そして菊田在ネパール日本国大使館特命全権大使、ディレンドラ産業・商業・供給省大臣に挨拶いただきました。
来賓の挨拶を受け、相原JILAF理事長が本セミナーの意義に触れ、開催準備に関わったすべての関係者に敬意を表しました。その上で、「今回のセミナーが、皆さんの今後の活動に少しでも役立ち、ネパールにおける社会経済の発展や雇用安定、労働者の権利保護などに結実することを祈念する。今こそ労働組合の力が発揮されるべき時であることを確認し合いたい。」と挨拶しました。最後にプスカール・アチャーリアネパール労働組合会議(NTUC)会長からも、本セミナーの意義に触れつつJILAFおよび日本国政府の協力に謝意が示されました。
開会式に続いて、JILAFから「日本の労使関係の特徴とその背景について」をテーマに、①日本の労使関係の歴史と変化、②建設的労使関係とその背景、③日本の三者構成システム、④コロナ禍の政労使の対応、等について触れた上で、「日本の労使関係にも課題はあるが、ネパールの労使関係の現状を踏まえると参考になる点もあるのではないかと思う。日本の事例をひとつのきっかけに、ぜひ自分の職場や地域の労使関係の課題を確認し、改善に向けたアクションプランを考えて欲しい。」と強調しました。
続いて、パンディーFNCCI上級顧問からは、ネパールの労使関係について「使用者が投資家からの期待に応えることに固執し、労働者が賃金の改善にだけに目を向けているような状況では、いつまでたっても労使関係は成り立たない。労使関係は否定しあう関係でなく、ポジティブな関係であるべきだ。そうすれば労使双方で改善の動きが出てきて労使関係が改善され、企業内の平和が達成される。そのためにも双方が相手の話をしっかり聞く、時には忍耐力も必要である。協議に失敗しても何度でも話し合いの場を設定することが重要。また、企業内だけでなく産別レベルの労使関係が構築できればいろいろな問題の解決が早くなると思う。労使のコミュニケーションを充実させ、経営課題やデジタル化への対応に立ち向かいたい。」と呼びかけました。
クリシュナ社会保険基金局長からはネパールにおける社会保障制度、特にインフォーマルセクターへの制度拡大についての講義があり、制度の対象や加入の事務手続き、制度のメリットに至るまで多岐に渡る質問や政府への要望が頻出しました。
二日目は、参加者自身による一日目の振り返り報告の後、ヨゲンドラNTUC事務局長が現状のネパールの労使関係について、JILAFのこれまでの活動について触れながら、「労使で何かを議論し意見する際に、ネパールではこの表現だと相手がどういう気持ちになるか、ということをあまり考慮することがない。ただ、私はJILAFの事業に参加して、同じ意見や主張でも、否定的でなく肯定的な表現に言い換える、お互いの不満点ばかりを論えるのではなく良い点を探す努力をする、という小さな工夫の積み重ねで信頼関係が構築できることを学んだ。今、我々にはそのような工夫が必要ではないか。」と訴えました。
閉会にあたり、シャーILOネパール事務所ナショナルコーディネーターが2日間のセミナーを振り返り、「企業の発展には建設的な労使関係が必要である。また、ネパールの2026年の発展途上国からの離脱に向けては、社会対話の充実が必要である。これらに欠かせないのは労働組合であり、このセミナーを機に、改めて労働組合の役割と対話の重要性を確認し合いたい。」と締め括りました。