英国コベントリー市のアマゾン倉庫で700名が労組結成要求
6月11日付の英国のガーディアン、14日付のニューヨーク・タイムズ(NYT)などが「英国の10%に上る物価上昇に対応する賃上げ要求に対して、英国アマゾン社は昨年2022年8月に5%の50ペンス(約63USセント)を回答した。これを侮辱と感じた労働者は各地の物流倉庫で散発ストを行ったが、中でも英国中部のコベントリー市倉庫では700名以上の労働者が全国都市一般労働組合(GMB)の協力を得て公式のストを実施し、同社で英国初の交渉団体として承認を要求した」と報じた。
しかし先週、会社は1,000人以上の新規従業員を雇ったとしたことで、同所組合員数は50%を下回ることになり、労働組合は承認申請の取り下げを余儀なくされた。会社は「労働組合側が従業員数を数え間違えたと」主張したが、GMBは「組織拡大に全力をあげ、早期に承認申請を再提出する」と言明した。
アマゾン社については安全や長時間労働・低賃金を問題にして、特に米国で懸命の組織化努力が行われているが、会社の抵抗は激しく、労働組合が存在するのはニューヨークのスタテン島の倉庫のみとなっており、ドイツでも10年間の努力にも実りがない。
アマゾン社の従業員数は英国全土で7万5000人を数え、コベントリー倉庫1カ所で強力な会社に対抗するのは容易ではない。他方、130年の歴史を持つGMBは全英各地に50万人を組織している。GMBは労組発足当時の「一般(General)、都市(Municipal)、ボイラーメーカー(Boiler maker)」の頭文字から由来している。コベントリー・アマゾンでは昨年末の郵便投票によりスト権を確立、今年1月に最初のストライキを行った。その際の要求は時給15ポンド(18.90USD)だったが、同社初任給は昨年夏の10~11ポンドから11~12ポンドとなっている。
コベントリーで昨年1,400名と報告された従業員数に対して、GMBは組合員が半数の700名を超えた去る4月、同社に労組の自主承認を要求したが、同社は拒否。GMBは5月始めに申請書を関係機関の中央仲裁委員会に提出した。しかし同社は従業員数が2,700名と報告したため、GMBは申請を無効にしないよう取り下げを決意した。労組結成失敗には再申請に3年かかるためだが、必要人数獲得次第、再申請するという。これについて同社は「1,400名の数字は会社が提出したものではない。最近になって従業員増員や労働組合を忌避したこともない。従業員は顧客の要望に応じて常時増員を図っている。また最低賃金も2022年8月から翌5月にかけて10%引き上げた」と説明する。
昨年の英国の労働組合員数は、2017年以来最低の625万人だったにもかかわらず、昨夏からのストライキ数は過去30年の最高を記録し、公務員、看護師、医師、鉄道労働者、教員などがストライキに参加した。NYTが紹介するある大学教授は「他の職業でもストライキが行われていることで、生活困窮の人達の間に連帯意識が生まれる。特に物価高騰で、これ以上失うものもないと思う時にそうなる」と説明する。
英国中部のアマゾン社にはコベントリー、ルージェリー、マンスフィールドの3倉庫があるが、10年前にGMBはルージェリー組織化に失敗しており、コベントリーの道にも険しいものがある。しかし多くのコベントリー従業員が口を揃えて「パンデミックによる繁忙時には懸命に働いた。しかし会社は生産性を言うだけで、仕事の怪我で休んでも慰めの言葉はなく、警告という厳しい規則が課される」と強い不満を口にする。こうして、組合員たちはポーランド語、ソマリ語、ルーマニア語、ヒンディー語など、多種多様な人種に合わせて作成された8カ国語の組合勧誘パンフレットを同僚達に向けて精力的に配布しており、ストライキは今週も続いている。