カナダ連邦公務員が賃上げと在宅勤務要求のストライキ
4月19日付けのニューヨーク・タイムズ(NYT)、28日付けのCTVニュースなどが、10日目に突入したカナダ連邦公務員のストライキについて次のように報じている。
4月19日、カナダ最大のカナダ公務員連合(PSAC)が賃上げと在宅勤務などを要求してストライキに突入した。そのうちの11万1000人は、全国250カ所に広がる管理・事務部門などの公務員だが、スト権の無い4万4000人の消防士などの人々の生活にとって必要不可欠なエッセンシャルワーカーの組合員もストライキに参加している。
そのため米国との国境検問所では交通渋滞、ビザや旅券発給、失業保険給付、年金の支払い、軍人恩給、さらには5月1日期限の所得税申告にも遅れが出ており、被害の広がりが懸念されている。他方、エッセンシャルワーカーの軍隊やロイヤル・カナディアン騎乗警察などの組合員は除外され、医療や教育などの労働者は各州政府の管轄にある。
要求の中心には柔軟な在宅勤務があるが、COVID-19のパンデミック以降変化した雇用慣行を巡る論議でもあり、週間の適正出勤日数について、公務員、民間部門ともに労使の見解に相違がある。
2020年のパンデミック発生以降、公務員も在宅勤務を続けてきた。しかし去る3月31日、政府は週2~3日の出勤を指示したことで、PSAC労組は全日在宅勤務の選択権を要求している。
ある組合員は「テレワークは権利であり、特権ではない。在宅でも職場と同様に効率的に仕事ができる。在宅で排気ガス対策や通勤時間の削減、生活の質が向上する」と主張するが、職場によっては「在宅では仕事が出来ない」とする労働者も存在する。
米国では4月13日にホワイトハウスが各省庁に対して「在宅勤務拡大に向けての計画設定」を要請したが、提出期限には触れていない。カナダではパンデミックにより特に旅券発給に遅れが出ている。
賃上げについてはパンデミック以降の物価上昇への対応を要求しているが、組合要求は13.5%で、国税庁部門からの要求は22.5%に上っているが、政府は3年間で9%と回答しており、交渉は行き詰まっている。
28日現在、10日目に入ったストライキに、PSAC労組のエイルワード会長はトルドー首相との直接交渉を求めているが、首相は「交渉には直接関与している。国民はストライキの長期化は望まない」と言明した。他方、職場復帰命令の発動については議会の反対が強いと予測されている。
なお、5月4日のNYTによれば、5月1日に労使間に合意が成立しストライキは終息した。
賃上げについてPSACは「関連諸手当を含めると4年間で12.6%プラス一時金ボーナス2,500ドル」と発表したが、政府は「関連諸手当を含めて4年間で11.5%プラス一時金2,500ドル」と食い違いを見せている。他方、政府は在宅勤務について「週3日以上の出勤」に譲歩は見せなかったが、各省庁に事態検討のための検討委員会を設置して、副大臣への助言機関とすることで合意した。