米野球マイナーリーグ選手の報酬倍増、選手会労働組合に加入
3月31日付けのニューヨーク・タイムズ(NYT)、4月3日付けのニュース・トリビューン(NT)などは「米野球のマイナーリーグ選手が大リーグ選手会労働組合に加入し、チームオーナーを代表する大リーグ連盟(MLB連盟)との5年協約の下、給与が倍増された」と報じた。
MLB連盟と選手会労働組合(MLBPA)の労使交渉で、マイナーリーグ選手を対象とする5年の労働協約が合意され、選手からは99%の賛成を得た。
妥結に当たり選手会代表のトニー・クラーク氏は、「今回の協約は、優れたアスリートであるマイナーリーグ選手の待遇を大きく改善するものであり、画期的なものとなった」と述べた。
マイナーリーグ選手の賃金は、協約により全7階層で倍増以上の昇給となり、シーズンオフ期間中も賃金を受取れ、住宅費、交通手段、食費面でも新設委員会管理のもとに改善されることとなった。
また、19歳以上で契約した選手は、6年後(現在は7年)にフリー・エージェント(FA)の権利を獲得することができ、苦情処理や処罰への苦情には連盟だけではなく、独立裁定に委ねることが出来る。
最低年俸は、新人(ルーキーRk)で4,800ドルから19,800ドルへ増額、Aクラスは11,000ドルから27,300ドルへ、AAクラスは13,800ドルから27,300ドルへ、AAAクラスは17,800ドルから45,800ドルとなった。
その他、多くの選手には、入団契約時に支払われる一時金であるサイニング・ボーナスがあるが、昨年ドラフトされなかった多くの新人選手には20,000ドル程度の一時金が、エリート選手には最高700万ドルの一時金が支払われた。
他方、連盟は「マイナーリーグ選手が昨年9月に労働組合への加入を表明した時、即時に団結権を認め、最初の労働協約締結に向けての協議に応じた。シーズンオフ期間中の短期間に5年協約の締結を見たことは非常に喜ばしいことだ」との声明を発表した。
選手会側にとっては、5,500人のマイナーリーグ選手をMLBPAに組み込めたことや、食事面、交通面での改善も交渉上の勝利といえる。
批判を呼んだ労働組合加入以前の低賃金については、2014年に最低賃金法違反の訴訟が起こされ、連邦判事からは協約合意の数時間前である2022年7月15日に1億8,500万ドルの和解金が承認された。
連盟の見解は、「大半のマイナー選手には、大リーグ進出の希望はなく、プレーも一時的で、早晩他の職業に就く」としていたが、政界からも圧力を受けて、態度を変更させた。
従来交渉組織がなく、なおざりにされてきたマイナーリーグ選手だが、これからは新たな手段が実現出来る事になった。