映画俳優労組が脚本家ストへ合流か
6月29日付のロサンゼルス・タイムズ(LAT)、30日付のワシントン・ポスト(WP)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などが「近日中にハリウッド俳優が現在の脚本家労組ストに加わる可能性が強くなった。この2労組の同時ストは60年来のことであり、映画とテレビ制作に重大な影響が出る」と報じた。
映画俳優ギルド(SAG)―ラジオ・テレビ芸術家連合会(AFTRA)と会社側の各社スタジオ・配信・プロダクションとの労働協約は6月30日に期限切れだが、労使協議を7月12日まで続けることで合意している。しかし合意不成立の場合には98%の圧倒的多数でスト権が確立されており、中でも1,000人余りが強硬な交渉を求めて執行部に書簡を送ったが、書簡の署名にはメリル・ストリープ、ジェニファー・ローレンス、ボブ・オデンカークなどの名前が連なり、「実情は中間で合意する状況にはない」と強調している。
組合側には16万人以上の映画俳優、スタントマン、ジャーナリスト、アナウンサーなどが所属するが、今回のストライキにはテレビと映画の俳優だけが参加する。
交渉事項の多くが全米脚本家組合(WGA)と共通するが、問題の一つには配信エコシステムによる報酬減があり、人気番組や映画にも従来の特許料は無く、再上映や再放送からの報酬も減額、物価上昇に追いつかない現状だと言う。またシーズン中のエピソード数縮小による収入減、さらにはAIを使った俳優の演技再生も深刻かつ共通の問題である。
映画・テレビの俳優による最近のストライキは1980年の3カ月だったが、脚本家労組に比べストライキは遥かに少ない。しかし両労組の連帯は強い。1960年には後の米国大統領で当時のロナルド・レーガン会長率いるSAGが、5カ月間の脚本家ストの中間で加わり、6週間の共同ストライキを行った。
現在の11,500名による脚本家ストはすでに2カ月が経過しているが合意の兆候は見えず、NBCやABC、CBSなどで多くの主要番組が中止を余儀なくされ、NETFLIXやAPPLE TVでも休止が続いている。その上に脚本家ストに同調して出演を拒否する俳優もおり、中止数は増大している。
脚本家ストではブロードウエー対象のトニー賞、アフリカ系アメリカ人や他のマイノリティの人々に対して贈られるBET賞が特別に開催を認められたが、7月12日発表で9月予定のテレビ番組対象のエミー賞の開催が危ぶまれている。
SAG交渉についても労使の隔たりが大きいと言われ、その行方が注目されている。