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英国で賃上げストライキの波

2022.09.26掲載

9月1日のCNN、2日のニューヨーク・タイムズなどが、英国の物価高騰に対抗する賃上げ要求ストの拡大を報じている。

英国では現在、郵便、コールセンター、鉄道、港湾など155,000人がストライキ中だが、今後も最大労組のUNITE、公務員のUNISON、そして教員、医師、看護師など多くのストライキが予測され、1970年代の物価高騰時に3カ月で労働損失日数が790万日に上ったとき以来の大きな不安の波が押し寄せている。

英国では7月に、40年来となる10.1%のインフレ率が記録され、来年には18%~22%の予測も出される中、各家庭の平均光熱費は80%上昇する見込みである。実質賃金は4月から6月の間に3%減少しており、こういった背景もあって、数万名の労働者が賃上げを要求してストライキを起こした。ストライキが珍しくない英国だが、今回は医師やエンジニア、弁護士や学者、教師などにも及ぶ広範かつ爆発的な発生を見せている。

他方、1980年代に50%以上を示した労働組合組織率は、過去数年若干の増加を示しながらも、現在は25%以下に低下した。多くの労働組合員を保持した鉱山や鉄鋼は消滅し、今は公務員や公共事業主体となったが、国営であった鉄道や鉱山、通信事業も民間に移された。

CNNによると、ロンドン大学のハイマン教授は「かつてのストライキは、炭鉱や鉄鋼などに集中していた。現在の組合員は公共部門や電力会社などに大きく偏っており、また、パートタイムなど不安定な職業の増加で、ストライキを継続出来る力はない」と指摘する。
またキングス・カレッジのベナッシ准教授は「サッチャー政策に反対した1980年代のストライキは製造業や鉱山など産業の興亡に関わるものだったが、今回は物価上昇に対応する賃上げという違いがある。しかし、英国のストライキは他の欧州諸国に比べて難しい。特に2016年の労働組合法改定で、ストライキは組合員の50%以上の投票率と40%以上の賛成を必要としてから難しくなった。また事前通告の期間が従来の1週間前から2週間前に延長された事もストライキを難しくさせた。ドイツでは投票も通告期間も必要ない」と述べる。(以上CNN)

更には、新任のトラス新首相は労働争議には厳しい対応を言明しつつ、「スト権行使には投票の50%以上の賛成、事前通告は1か月前に延長する」と主張している。一方、英国の4月から6月までの失業率は50年以上ぶりの3.8%にあり、労働者不足の状態にあることは賃上げ要求に有利に働く。

労働組合についてはUNITEが勢力を伸長させる中で、450件の労働争議の内、80%で勝利を収めてきた。過去30年で最大規模となった今夏の鉄道ストでは、多くの国民の怒りを買いながらも、ミック・リンチ委員長のウイットに満ちた演説が持てはやされた。500年間国営だったロイヤル郵便は民営化され、チェコの富豪が最大株主となった。しかし4億ポンドの利益配当を実施しながら賃上げを2%に抑える態度に怒りを見せて、115,000人の郵便労働者は8月末にストライキを起こした。

刑事弁護士協会は来週に無期限ストを宣言し、数千件の裁判が中止される。主張は「報酬が低額であるために弁護士の離職が増加して、59,000件の審理が滞り、正当な裁判が出来ない。そのため、報酬の増額を政府に要求する」と言う。多くの医療団体や教員組合からの主張も同様の内容である。
しかし、9月19日のエリザベス女王の国葬の際には、多くの組合がストライキを中断すると言明した。