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サムスン電子、労組と初の賃金協約締結、韓国でストなしでの協約締結相次ぐ

2022.08.24掲載

8月9日付の朝鮮日報(電子版)はサムスン電子労使が初めて賃金協約を締結することを伝えている。要旨は以下の通り。

サムスン電子内の4つの労働組合からなる労組共同交渉団はこのほど、組合員投票を経て「2021-22年度賃金交渉暫定合意案」を議決した。労使は来る10日、京畿道竜仁市器興キャンパスで賃金協約締結式を開く予定であり、これは創業以来53年ぶり初めての労使協約締結となる。

サムスン電子は昨年の賃金引き上げ率を7.5%(基本引き上げ率4.5%+成果引き上げ率平均3.0%)、今年9%(基本引き上げ率5%+成果引き上げ率平均4%)と決定した。

サムスン電子労使は昨年10月から賃金交渉を始めた。交渉初期、労組が全社員の契約年俸1000万ウォン(約100万円)一括引き上げ、毎年営業利益25%の成果給支給などを要求したが、会社側がこれを拒否して、交渉が長期化した。

双方は本交渉11回、実務交渉20回、計31回の団体交渉を行った末、今回の最終合意に達した。サムスン電子における労組加入率は5%程度で、会社は既存の労使協議会と共に賃金水準を決定しながら労組との交渉も並行してきた。
(要旨は以上)

サムスン電子は50年以上に亘って労働組合なしの経営を行ってきたが、2019年11月に初めて韓国労働組合総連盟(FKTU)傘下の労働組合が誕生した。これまでかろうじて小規模な3つの労組が存在していたが、ナショナルセンター傘下の本格的労働組合はサムスン電子労働組合が初めてである。今回、同労組が中心になって他の3組合と交渉団を結成し団交に臨んだ。

交渉は10ヶ月を超え難航したものの、争議行為を伴う紛争に至ることなく、話し合いで解決に至った。

またかつて争議行為が頻発した現代自動車労使においても7月23日に2022年の賃金交渉に合意しているが、ストなし、無紛争による合意は4年連続となった。
賃上げと成果金は、前年度の経営実績の向上や最近の半導体需給難の長期化、グローバル地政学的脅威など、対内外リスクを総合的に考慮し年俸を前年比9%引き上げるとしている。
あわせて、現代自動車労使は急変する自動車産業経営環境とリスク要因に対応するため、労使代表が参加する「国内工場対内外リスク対応労使協議体」を結成する。そこで四半期に1回、対応案を労使協議会で議論することを決定している。

韓国は日本はもとより国際的に見ても労働争議が多発する国の一つである。争議による労働損失日数は2011年から2020年までの10年間で見ても日本の90倍を超える。

日・韓労働争議の動向
2011 2021 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
労働争議
件数
日本 57 79 71 80 88 66 68 58 49 57
韓国 65 105 72 111 105 120 101 134 141 105
労働損失
日数
日本 4,378 3,839 7,035 19,932 14,606 3,190 14,741 1,477 11,002 1,817
韓国 429,335 933,267 637,736 650,924 446,852 2,034,751 861,783 551,773 401,845 554,009

出展:ILOSTAT

一方で、戦闘的な韓国労働組合の代名詞とも言えた現代自動車労働組合は4年連続でストなしの賃金交渉妥結に至っている。また現代自動車は従業員代表間との労使協議会とは別には別に今後のリスク対応への労使協議会を労働組合との間で結成したとも伝えられている。

また主要民間企業の賃上げ交渉において、先のサムスン電子をはじめ、LG電子、IT大手のカカオ、大韓航空などがそれぞれスト無しで賃金協約締結に至っている。

緊張感の高まる国際情勢、2年を超えたコロナ・パンデミック危機他、企業労使を巡る環境はこの2年間で劇的に変化している。サムスン電子労使や現代自動車労使の動きは、企業がこうした内外の重大なリスクに対応していくためには、労使の話し合いによる問題解決あるいは協力が重要であるとの認識が深まりつつある結果ではないだろうか。