イラン全土にストライキの波
12月6日のニューヨーク・タイムズ、NBCニュースなどが「イラン風紀警察による女性死亡事件を受けて、体制変革を要求するストライキが全国各都市に広がっている」と報じた。
SNSの呼びかけで始まった12月5日(月)から3日間のストライキは50以上の都市に広がり、数十年来最大の規模に発展し、宗教政治支配への抗議姿勢を明確にした。各地のショッピング・センターなどはゴーストタウン化し、医療や食肉など各種施設や店舗が閉鎖された。ソーシャル・メディアには通信が溢れかえっている。
イスファハンの飲食店主は「今回示された労働組合の団結は素晴らしい。デモに参加できない我々も団結を示すことが出来た。金銭的には大変だが、従業員も休業に協力してくれた」と語り、テヘランのタクシー運転手も「ストライキに参加した。若者が血と命を捧げているこの革命に、最低のことが出来た」と語る。ストライキを呼びかけた活動家は「これは9月にイスラム・ドレス・コード違反で風紀警察に逮捕され、死亡した事件に抗議する第2段階だ」と述べた。その風紀警察については、イラン検事総長が数日前に廃止を言明したが、真偽には疑問が持たれている。
全国に広がる抗議活動の中で、人々はイスラム共和国の全面的な刷新を要求し、強制的なヒジャブ法や検閲、汚職や誤った経済政策など政治的・社会的抑圧に不満を表明、問題解決には政権交代が必要と要求している。
これに対し政府は、5名のデモ参加者を私服のイラン革命防衛隊員殺害の罪で死刑判決、他のデモでは11名を長期懲役に処した。こうして幾つかのデモは解散や規模縮小を余儀なくされている。イラン人権団体によれば、9月の事件以来、470名が殺害され18,000人が逮捕されたと言う。
イランにおける抗議活動は2009年と2018年、2019年にも起きたが、何れも政府に鎮圧された。しかし1979年のイラン革命時には豪商や実業界、産業労働者、公務員が広範なストイキを展開して経済を麻痺させた。
今回の店舗閉店には、司法長官が「調査の上、事業許可取消しや刑罰も有り得る」と言明、またイスファハンの閉店店舗の壁にはヘイト・メッセージのペイントが塗られたり、ストライキ参加を表明したサッカーのダエイ選手所有のレストランと宝石店は治安警察により閉鎖されたと言われる。
抗議活動が大きな力を発揮するには産業労働者を巻き込み、産業施設を麻痺させる必要があると言われるが、参加する労働者や公務員は失職の危険を負う。抗議活動の呼びかけに対しては座り込みなど非暴力的な反抗が見られ、配管工事も3日間は断られるなど、静かな抵抗が起きている。