英国で公務員中心にストライキの波
12月7日のニューヨーク・タイムズ、ロイターズ、8日のマレーメールなどが相次いで、英国公務員を中心とする各業種にわたる物価対応の賃上げ要求ストの波について報道した。
英国統計局は今年9月、2014年の公務員スト以来となる205,000日の労働損失を報告したが、事態は更に深刻化の様相を見せている。
今週には、ビール会社で200人が会社回答を不満とし、ホームレスの住居支援NPOでは600名が2週間のスト、ピクルス工場では50人がストライキに入った。彼らはイングランド・アイルランドで最大の120万人民間労組、UNITEに所属する。
賃上げ要求ストはさらに広がりを見せており、クリスマスまでに、看護師や救急車、鉄道労働者による連日のスト予告、公務員・サービス労組の空港旅券検査部門では12月23日から8日間のスト予告、教員組合や全国医療サービス労組からも賃上げ要求が強まっている。
リセッションに入った英国経済は回復が2024年までは望めない状況にあるが、10月には40年来最高となる物価上昇11%に見舞われており、長年の賃金停滞と相まって国民生活は大きく圧迫されている。更に独立調査機関の予測では「今後2年間に物価調整後の可処分家計所得で計算した生活水準は7%下落し、1950年以降最大の落ち込みになる」とされる。
しかしスナク新首相は「ストライキには厳しい政策で臨む」と言明。財務省も7週間で退陣したトラス前政権の政策を修正する方向で、大幅増税と緊縮財政を発表した。
救急車ストはイングランドとウエールズ、アイルランドで12月21日、看護師ストは15日と20日が予告されたが、賃金だけでなく深刻なベッド不足や人手不足が指摘されている。
来月にかけては英国鉄道とユーロスター鉄道(ロンドン・パリ間)、バス運転手、ロイヤルメール郵便、スコットランド教員組合、運転試験検査員のストも予告されている。英国では今年すでに全国鉄道ストで数回の交通麻痺があり、鉄道ストは来週にまた48時間、クリスマス・イブにも予告されている。
問題の中心は賃金だが、特に公務員部門での民間部門との賃金格差拡大、加えて予算不足と人員不足の深刻化が大きい。