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米国鉱山労組の2年間のストライキ、妥結なしに撤退

2023.04.03掲載

3月3日のニューヨーク・タイムズ、およびシアトル・タイムズなどが2年間続いた米国鉱山労組のストライキ撤退を以下のように報道した。

米国でも最長とされる2年間のストライキを続けてきたのはアラバマ州のウォリアー・メット炭鉱の炭鉱夫だが、全米鉱山労働組合(UMWA)に所属する。

ストライキの開始は2021年4月1日、1,100名により賃金労働条件の改善を求めて行われたが、その後仕事に戻る労働者や近隣のアマゾン倉庫で働く労働者などもおり、現在のスト参加者は700名から800名とみられる。アマゾンの労組結成などIT産業における新しい組織化として全国的な注目を集めたのに対し、メット炭鉱の労働問題は旧来の労働者の連帯を示すものと見られてきたが、スト撤退は伝説的に強かったこの労働組合にとって大きな痛手となる。

ストライキの間、相互非難の応酬が続き、暴力や破壊行為なども起きたが、組合員を特に怒らせたのは2015年の会社破産危機の際に応じた賃下げについて、業績回復後も他社のようには賃上げに応じなかったことだが、同社はウェブページで「賃上げの約束はしなかった。しかしここ数年、いろいろな形で賃上げは実施してきた。また組合員の円滑な復職にも努力している。UMWAとの協力は建設的かつ相互利益の関係維持に欠かせない条件だ」と説明している。

労働組合には世界の労働組合から支援の声が寄せられているが、政治的には分断状態にあり、共和党色の濃いアラバマ州にあって、脱炭素を掲げる民主党からは大きな支援が得られなかった。またトランプ前大統領を含めて多くの共和党議員が炭鉱救済を公約にしているが、ストライキを公に支援する声はなかった。

その中で、ストライキの行方を決めたのは石炭価格の上昇と言えるが、中でも同炭鉱産出の冶金用石炭には鉄鋼からの需要が高い。UMWAのロバート会長は「組合員の団結力を称賛したい。しかし石炭価格上昇で会社は数少ない代替労働者を使って、操業を続けられるようになった。価格上昇が続くと予測される数年間、ストライキが長引く状況になった」と語る。ストライキ開始の2021年に1億5,000万ドルであった同社利益は22年には 6億4,100万ドルに増加、株価も143%上昇した。

組合員の政治的立場も微妙で、トランプ支持とバイデン支持があり、黒人労働者はバーミンガム市に多く、白人労働者は炭鉱近くの郊外に多いが、ストライキの期間中はお互いに食料を持ち合うなどして相互支援を続けてきた。

ロバート会長は「会社は代替労働者に1,900ドルのボーナスと年収132,000ドルを提示しているが、アラバマ州でも高い給料だ。皮肉にも我々のお陰で代替労働者は米国で最高の賃金にあるが、復職する組合員にも同額が払われる」と述べた。交渉再開は組合員の復職完了を待って、数週間のうちに行われる予定である。