活動報告 各国の労働事情報告

2021年 ラオスの労働事情 (ユース非英語圏チーム)

2022年2月4日 報告

国際労働財団(JILAF)では、ユース非英語圏チームとしてラオス労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、労使関係と生産性運動、労使紛争未然防止の取り組みと労働委員会の活動について学ぶためのプログラムを準備作成した。しかし、新型コロナウィルスの影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となったため、ナショナルセンター並びに参加者から提出された資料を基に外務省、JETRO、JILAFの資料を参考にまとめたものである。

ナショナルセンター ラオス労働組合連盟(LFTU)より10名参加

1.基本情報

ラオス人民民主共和国は東南アジアのインドシナ半島に位置する社会主義共和制国家である。タイ、ベトナム、ミャンマー、中国と国境を接し人口約700万人、首都はビエンチャン、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟しラーオ族を中心とする多民族国家である。海と接しない内陸国で、国土は本州とほぼ同じ24万平方キロメートルその約6割は森林となっている。宗教は75%が仏教、言語はラオス語、政治はラオス人民革命党による一党独裁体制が敷かれている。かつては王制によって統治されていたが、タイ、フランスによる支配を経て、長い内戦が続いたのちに現在の体制となった。伝統的な親日国でもある。
主要産業は農業で国民の約7割が従事している。金や銅が産出され水力発電が盛んである。GDPは約180憶ドル、一人当たりのGDPは2542ドルとなっており、経済成長率は6.5%でインフレ率は6.28%となっている。1日2ドル未満で暮らす貧困層は国民の約6割と言われている。
世界労連(WFTU)とアセアン労働組合協議会(ATUC)に加盟している。

2.ラオス労働組合連盟(LFTU)の活動状況

ラオス労働組合連盟の組織人員は231025人、うち女性は104878人、労働組合職員は1429名でそのうち女性は186名である。
現在、様々な問題や課題に直面している。危機的な経済面での問題、COVID-19の感染拡大、大規模な自然災害、失業問題等多くの国民と労働者に影響を与えている。
LFTUは各レベルの労働組合に対しての指導やアドヴァイスに注意を払っている。とりわけ職場の安全衛生とCOVID-19感染予防については、中央や地方の特別委員会の対策実施事項について労働組合のメディアであるラジオを通して注意を払うように促している。安全と感染拡大防止のために労働者に仕事を休むようにも助言している。
また、COVID-19による影響を受けた労働者に対しては、三者委員会で協議し休職者に対する賃金補償を政府に提言し、各種情報について各県レベルで政府関係機関と協力調整するよう通達を出している。

3.労使紛争を取り巻く情勢と労働組合の取り組み

(1)一般的労使関係の対立は、使用者と労働者が労働法や社会保障法、個別の労働契約と職場のルールを遵守しないことにある。つまり労使紛争は、法や規則をめぐる対立、利害関係がもたらす対立の2タイプとなっている。

  • 個別労働契約、労働協約
  • 労働時間、休日、賃金、時間外手当
  • 労働者の利益と責任
  • 女性と若年労働者の活用
  • 労働安全衛生

などが原因となっている。
LFTUは、昨年関係部局及び三者組織と調整協力してフォローアップやアドヴァイスを実施した結果、23件の労働争議の内16件の解決を図り残り7件は継続調整となっている。解決案件の調停金額は、ラオスの通貨11億2555万1千キープとなり労働者への支払いを請求している。また、280件の個別労働契約の作成を促進し31の事業所で労働協約を締結した。

(2)労働争議を解決するための5つのステップ

① 調整形式の調停

② 行政による調停

③ 三者労働委員会による調停

④ 裁判所の判決

⑤ 国際的な形式の調停

(3)労働争議が発生した場合の手続き

 労働争議が発生した場合、当事者は労働者と使用者または法定代理人であり、解決策を模索するため協議を通して解決を目指す。
当事者が合意に達しない場合、行政レベルの管理機関に申請するか判決を得るため司法手続きをとる。その内容が、労働契約か法律違反となった事案を労使紛争という。
労使紛争が発生し、労働者が調停に対して不服を申し立てた場合、労働者の権益を守るため法定代理人に、調停・交渉・人民裁判所での労働事件訴訟提起の権利を委任することが出来る。

(4)労使紛争が調停された結果

 紛争が解決した場合、労働者は同意内容に従って労働に従事し、解決されない場合は職場の平和は維持されず、労働争議や労働訴訟さらにはストライキ発生の要因となる可能性がある。

4.COVID-19の予防対策

政府はCOVID-19感染拡大予防のための特別委員会を設置、対策強化の首相令を発出した。ラオス労働組合連盟としては、特別委員会を設置して主に広報活動に重点を置き、通達や指導を徹底するための協議会を開催、自身を守るためのワクチン接種の奨励を行った。組合員には新しい生活様式(マスク・手洗い・ソーシャルディスタンス)の受け入れ、使用者には感染拡大防止の措置の実施を要請した。具体的には、職場での安全な距離の確保、体温チェック、医師との連携によるワクチン接種である。
加えて、近隣友好国の労働組合や国際機関と連携して必需品の配布、県レベルでの拡大防止対策の実施を要請した。