活動報告 各国の労働事情報告

2022年 ラオスの労働事情 (ラオス・ベトナムチーム)

2022年12月9日 報告

国際労働財団(JILAF)は、2022年11月21日~25日、ベトナム・ラオスの労働組合活動家に日本の労働事情などについての知見を深めてもらうためのプログラムを実施した。プログラムはCOVID-19パンデミック禍にあって、オンラインにより実施されたもので、以下は、参加者による報告等を参考にまとめたものである。

ラオス労働組合連盟(LFTU)

  • マスメディア部次長
  • 教宣部次長
  • 国際部職員
  • 総務部職員
  • 監査部職員
  • 労働保護部副部長
  • 組織部次長
  • 実施局長

ラオスの労働事情

1.ラオス労働組合連盟(LFTU)におけるこの1年間の活動(概要)
(1)活動推進にあたっての基本的考え方

 昨年開催された第8期全国総会決議に基づいて、労働者生活に影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症の流行、自然災害、失業問題などの経済的・社会的な課題に直面する中で運動を進めてきたが、総会決議の展開は多面的に成功している。
なお、各レベルの労働組合は、次の考え方を基本に運動を展開している。

  1. 各レベルの労働組合が、高い責任を持って国家的課題の取り組みに貢献するよう指導する。
  2. 経済財政状況や違法薬物問題の解決が最悪な危機に陥る危険から脱却することを目指し、国家的課題の実行にあたって、個々の役割に応じ積極的に貢献する。
  3. 多様な形式や手法による周知、教育研修や薬物依存者へのアプローチにより、違法薬物が家庭、社会、国家に及ぼす悪影響と危険性を正しく理解させるように努める。
  4. ラオスの違法薬物問題に対応し、これを抑制、解消し、労働者の生活を向上させるとともに、社会の治安・安全・秩序を確保することを目指す。
  5. 労働者の能力と技能を向上し、短期的・長期的に労働市場の需要に対応していくため、農産物、手工芸品の商品化促進に貢献する。
(2)具体的な取り組み
  1. 各レベルの労働組合は、組合員に新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種を受けさせるための周知に注力してきた。
  2. 広報活動開発の戦略的計画により、広報活動が以前より改善されてきている。この1年間で特に顕著だったのは、ラジオ、テレビ、SNSによる広報チャネルの拡大である。
  3. 各レベルの労働組合の体制も、新時代の労働組合業務に適合するように改善再編されてきた。ラオス労働組合連盟(LFTU)の執行役員数は57人(うち女性11人)で構成され、全国には39省庁組合連合と18地方組合連合、首都ビエンチャンには145郡組合連合と3首都ビエンチャン組合連合がある。また、基礎的労働組合は6,536組織あり、ラオス労働組合連盟(LFTU)の組合員数は計231,025人(うち女性104,878人)である。なお、過去1年間の基礎的労働組合は986組織拡大し、組合員数は8,072人(うち女性3,768人)増加している。
    • 〔(注1)基礎的労働組合とはいわゆる草の根レベルの労働組合を意味しており、一般的には、企業レベルというよりは「事業所レベル」の労働組合をさす。〕
    • 〔(注2)ラオスの労働組合法では規模100人以上の企業は創業以来6ヵ月経過した段階で労働組合を設立することが求められている。なお、労働組合のない企業においては労働者代表を置かなければならない。〕
  4. この1年間にラオス労働組合連盟(LFTU)は、労働者の権利や利益の保護のために次の活動を行った。
    1. 8つの村で無職の若年者を対象に、「労働」に関する調査を行い、データの収集を完了した。
    2. 農業分野(例えば「バナナ栽培」など)における5社を対象に労働環境に関するデータの収集を行った。その結果、対象企業が支払っている最も低い賃金は80,000キープ(1日当たり)、最も高い賃金は100,000キープ(1日当たり)であった。
    3. 首都ビエンチャンの組合員と工場労働者を対象に、交通安全運転に関する周知・啓発活動を19回行い、計1,499人(うち女性1,246人)が参加した。
    4. 集団労働契約締結の取り組みを計27回行い、この中で労使紛争14件を解決した。
    5. 「労働組合業務、社会保障業務、人身売買対策業務の基礎知識と法律相談の周知」というテーマで移動型の周知活動を行った。
    6. ボケオ県労働組合連合と関係機関は、経済特区で働く労働者で人身売買の被害に遭っていた251人のうち、ラオス人労働者165人、タイ人労働者53人、シンガポール人労働者1人、ロシア人労働者1人、インドネシア人労働者16人、ベトナム人労働者10人を解放した。
2.労使紛争について
(1)労使紛争の要因と解決方法

 労働紛争の主な要因として次の点が挙げられる。

  • 労働者の利益と義務に関すること
  • 企業(職場)の規則に関すること
  • 労働日や労働時間・休日などに関すること
  • 賃金や時間外手当の計算に関すること
  • 個別労働契約に関すること
  • 集団労働契約に関すること
  • 女性や若年者の労働に関すること
  • 安全衛生に関すること
(2)労使紛争の解決方法

 労使紛争の解決方法には次のステップがある。

  1. 当事者間での話し合いによる解決
  2. 行政機関による調停(県レベル、郡レベル、村レベル)
  3. 政労使三者構成の「労使紛争解決委員会」による調停
  4. 訴訟(裁判所への提訴)
3.最低賃金の改定

ラオスの最低賃金は、全国一律で月単位で決められている。最低賃金の決定は、政労使の三者構成(労働社会福祉省、ラオス労働組合連盟、ラオス商工会議所)による国家労働委員会で話し合われ、最低賃金の引上額が政府に提出され、首相が最終的に決定する仕組みとなっている。
2022年の最低賃金は、月額120万キープ(2022年11月の為替レートで円換算すると、約9,500円相当)に決定した。さらに、2023年5月からは130万キープに増額することも既に決定している。

4.新型コロナウイルス感染症対策

首相府がラオス国への出入国に関する措置を緩和することを決定したことを受け、ラオス労働組合連盟(LFTU)は、各レベルの労働組合への指導を行ってきた。具体的には、ラオス労働新聞、テレビ番組、ラジオ、ラオス労働組合連盟(LFTU)の公式SNSアカウントを通じて様々な通知やその内容を周知・広報することにより、労働者に対し、中央省庁機関、地方行政機関レベルの対策特別委員会が発行する全ての通知を厳守するよう指導している。
また、担当医師と調整しながら、免疫力を獲得するため、ラオス労働組合連盟(LFTU)の役員、定年退職した職員、職員とその家族全員に対し、1回目、2回目、3回目のワクチン接種を行った。