JILAF/ILO共催多国間セミナー「建設的労使関係の構築および労使交渉・協議のための経済統計とデータ分析について」を開催
国際労働財団(JILAF)は、11月7日~11日にILO労働者活動局(ILO-ACTRAV)との共催により、タイのバンコクにおいて、多国間セミナーを開催しました。本セミナーには、アジア太平洋地域(インド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、タイ、ネパール、フィリピン、マレーシア、モンゴル、ラオス)から17名の労働組合リーダーが参加しました。
開会にあたり、大辻ILO労働者活動局フィールドスペシャリストから、JILAFおよび日本国政府への謝辞とともに、「COVID-19からの復興や気候変動、政情不安、民主主義の危機等様々な変化が起こっている中、それらへの対応にあたっては政労使が建設的な関係を構築することが極めて重要になってくる。政労使で建設的な関係を構築するためにも客観的なデータや指標の分析と、それに基づいた協議スタンスをこのプログラムを通じて学んでほしい。」との挨拶がありました。
続いて、木暮JILAF参与から、ILOや参加者への謝意を表しJILAF事業の紹介をした上で「団体交渉はCOVID-19パンデミックが雇用と収入に及ぼした影響を緩和する役割を果たし、企業と労働市場の回復力を強化しながら不平等への影響の一部を緩和するのに役立つものだ。今回のプログラムはこのような状況で非常にタイムリーであり、参加者の皆様には、この重要な機会を生かし積極的に行動していただきたい。このプログラムが皆さんにとって実りあるものとなり、皆さんの国の労働者の問題に効果的に取り組む一助となることを祈念する。」と挨拶しました。
JILAFからは全5日間のプログラムのうち、1日目、2日目、4日目に①“COVID-19パンデミックへの対応-雇用と労使関係に関する教訓と課題”、②“春闘:団体交渉における経済データ等の活用について”、③“生産性と利益の分配:日本の事例について”と題した講義を実施しました。
①“COVID-19パンデミックへの対応-雇用と労使関係に関する教訓と課題”では、パンデミック以前の日本の労働分野の課題とパンデミックが与えた影響について、各種統計に基づき説明した上で、パンデミックへの具体的な対応や変化の事例に日本の労働組合の具体的な活動を例示しながら説明しました。
②“春闘:団体交渉における経済データ等の活用について”では、まず日本の春闘がどのように行われているか、その構造やスケジュール、主旨等について説明した後、春闘結果の推移と消費者物価指数、労働分配率、労働生産性等、関連する様々な指標を元にそれらが春闘や最低賃金に与える影響等について説明しました。
③“生産性と利益の分配:日本の事例について”では、労働生産性についての説明をした後、労働生産性の現状についてデータに基づいて紹介し、最後に日本の労使における改善事例を説明しました。
これらの講義に対して、参加者からは、日本の最低賃金制度、社会保険制度、団体交渉、生産性向上と雇用維持の関連性等、多岐にわたる質問があり適宜回答しました。
閉会式では参加者へ修了証が授与された後、主催者を代表して大辻スペシャリストと木暮参与が挨拶しました。木暮参与からは「今回のプログラムでは講義や参加者間の交流で様々な有益な情報や知識を得たことと思う。今後はこれらの情報・知識を自分の国や組織でいかに実践できるかが問われてくる。ぜひとも実践し活動に役立てて欲しい」と挨拶し、プログラムを終えました。