活動報告 労使関係開発

パキスタンPWF/JILAF労使関係セミナーの開催

開催: 2022.12.10 2022.12.11
過去の招へい者からの報告セッションの様子

国際労働財団(JILAF)は、12月10日~11日にパキスタン労働者連盟(PWF)との共催で、パキスタンのラホール市において労使関係セミナーを開催しました。同セミナーには、全国の労組指導者など115名が参加しました。

PWFは、職場における暴力やハラスメントの防止をめざして、ILO第190号条約の批准に向けた取組みを労働運動の主要な方針として掲げています。グローバル化における労働組合の役割について、建設的労使関係の確立、雇用保障の確保のほか、職場におけるジェンダー問題に起因したハラスメント防止等に焦点を当てることを目的として2日間のセミナーを開催しました。

開会式では、冒頭JILAFの相原理事長がパキスタンで起きた大規模な洪水被害に対して哀悼の意を示すとともに、日本が抱えている社会課題に触れつつ本セミナーの開催意義を述べました。次に、PWFのナシーム会長が、パキスタンの職場では労働安全衛生のニーズが高く、長年のJILAFの支援に感謝していることと、訪日の招へいプログラム再開を強く願っている旨の挨拶がありました。続いて、木暮参与、パンジャーブ州政府、ILO専門家、パキスタン使用者連盟(EFP)らが、それぞれ挨拶を行いました。

加藤プログラムマネージャーは直近のJILAFの活動を紹介した後、木暮参与が「最近の日本の労働事情について」と題して、①少子高齢化・人口減少への対応、②労働・社会保障法制の概要について概説しました。参加者からは、休業補償など新型コロナウイルスに対する政府の対応のほか、定年制度や育休・産休制度などについて質問が出されました。
ラホール経営科学大学のサイード教授からは、ILO第190号条約「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約」の労働組合ポジションペーパーについて、PWF家内労働組合のアルーマ事務局長(2016年の南アジア女性チーム被招へい者)からは同条約批准に向けたこの間の労働組合のキャンペーンについて、それぞれ報告がありました。

2日目は、PWFのアワン前事務局長がパキスタンの労働運動の発展に対して、JILAFが深く関与してきた経緯を説明した後、2022年のパキスタン・モンゴルチーム被招へい者(オンラインプログラム)で日野パックモータース労働組合の参加者が、招へいプログラムの経験を参加者と共有しました。
ILOの松浦ジェンダー専門家からは「インフォーマルエコノミーにおける脆弱な労働者とILO第190号条約・ジェンダー平等の推進」と題して、ILOのジェンダー平等の取組みのほか、暴力とハラスメントの定義など、ジェンダー平等に向けた基本コンセプトを参加者全員で共有しました。
JILAFの木暮参与は「ビジネスと人権」と題して、ビジネスと人権に関する国連指導原則やILO中核的労働基準、OECD多国籍企業行動指針、グローバル枠組み協定の事例を紹介した上で、労働組合に求められている役割と期待を述べました。
ILOのラジ プログラムオフィサーからは「パキスタンにおける雇用安定の確保に向けた労働組合の役割」と題して講演を行い、「労働組合は労働者の権利と人権に焦点を当てるべきであり、男女の賃金差など様々な客観的データを用いて経営側と交渉して欲しい」と訴えました。

その後、大手スポーツ用品メーカーの下請け企業「フォワードギア社」の社長でありパキスタン使用者連盟(EFP)のカワジャ副事務局長とPWFのナシーム会長が、ILO第190号条約の批准を求めたシャリフ首相宛ての共同書簡に署名を行いました。

閉会式では、PWFのアワン前事務局長が、2日間のセミナーを振り返った上で「コロナも収束してきているため、ぜひ来年の招へいプログラムは若手の組合活動家を日本に送りたい。また職場環境改善のためのPOSITIVEプログラムを再開し、建設産業などのチェックリスト作成などでJILAFに協力をして頂きたい」と訴えました。

参加者の様子

  • 労使関係セミナーの開会式
  • 木暮参与のビジネスと人権の講義