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No.697(2023/2/3)
日米政府、サプライチェーンの人権促進のタスクフォース設置

 1月6日、日本とアメリカの政府は、ワシントンDCにおいて、企業のサプライチェーンでの強制労働や児童労働などの人権侵害を排除し、国際的な労働者の権利の保護を促進するため、両国の政府によるタスクフォースを設置し、協力をすすめることに合意した。

 この合意は、「サプライチェーンにおける人権及び国際労働基準の促進に関する日米タスクフォースに関する覚書」に示されているもので、米国を訪れた日本の西村康稔経済産業大臣と米国通商代表部のキャサリン・タイ代表が確認し、署名したものである。

 このタスクフォースは、人権と国際労働基準の保護促進に向けて、両国での普及、好事例、法令、政策などについて情報共有を行うとする。そして、企業、労働団体、市民組織などのステークホルダーとの対話を促進するとしている。その対話には、人権デューデリジェンスに関するベストプラクティスや事業主への周知などについて、マルチ・ステークホルダーの関与や意見聴取も含まれる。

 また、このタスクフォースは、共同議長を置くが、日本側は経済産業省、米国側は通商代表部が担当し、構成メンバーとして、両国政府の関連省庁や政府機関が参加する。タスクフォースは、原則として半年ごとに開催されるとともに、それらの会合において、年1回、覚書の実施状況について話し合うとしている。

 このタスクフォースに関連して、米国のタイ通商代表は、本件に関するプレスリリースで、日本政府が2022年9月に策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(経済産業省)に触れ、「日本政府は労働者の権利を促進するための闘いで、一貫して信頼できるパートナーだ」と述べた。さらに、強制労働への対応を強調し、「この問題で、両国政府はどのように協力し、デューデリジェンスに関して協調できるかについて優先的に議論してきた」と語った。

 また、日本の西村経済産業大臣は、1月5日の講演で、「日米政府は、これまで、「ビジネスと人権」の分野で、絶え間なく議論を進めてきた」と述べた。

 日米両国政府の確認に基づくタスクフォースは、今年から動き出すことになる。日本企業、とくにグローバル企業は、国内、国外に複雑なサプライチェーンを持つことも多い。今後、このタスクフォースについて、企業の労使が関心を深め、サプライチェーンでの強制労働、児童労働などの人権侵害が発生しないよう、人権デューデリジェンスの実施をはじめ、十分な対応をはかることが求められる(了)。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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