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No.680(2022/8/9)
鉄道労使の交渉促進にバイデン大統領が大統領緊急委員会(PEB)を創設し、議長と委員2名を任命、滞貨増加に苦情多発

 7月15日と21日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、17日のネイキッド・キャピタリズム(NC)などが「こう着状態にある貨物鉄道各社の労働協約改訂交渉の打開とストライキ回避のために、バイデン大統領は大統領緊急委員会(PEB)を創設し、議長と委員2名を任命した。他方、協約交渉とは別の問題として人手不足による滞貨問題が深刻化している」とも報じた。

 BNSF鉄道、GSX運輸、ユニオン・パシフィック、ノーフォーク・サザン鉄道などの貨物鉄道各社と115,000名を包含する12労働組合の労働協約は2019年末の期限切れ後に改訂交渉中だが、チームスター傘下の23,000名組合が17日期限にスト権を確立したことから、大統領は急遽PEBの委員3名を任命し、交渉促進に介入することになった。

 労使交渉には6月から全国仲裁委員会(NMB)が仲裁に入っていたが、これが失敗し、今回のPEB創設となったが、これにより60日間はストライキを回避できる。PEBは30日間の調査後に勧告を提出、労使はその後の30日までに合意を目指す。その後はストライキかロックアウト、議会による職場復帰命令、第3者による強制裁定となる。

 交渉上の問題点には、賃上げと厳格な就業規則があるが、賃上げについてAFL-CIOは「5年間に1,400億ドルの純利益を上げながら、3分の1の45,000名を人員整理した会社が、賃上げに応答しない」と非難する。他方WSJとNC紙は「安全面から労働組合は1人乗車などの合理化に強く抵抗している。また深刻な人手不足から貨物輸送の遅れや鉄道のサービス低下が顕在化して、炭鉱や穀物業界、港湾当局からも強い苦情が出ている」と指摘した。

 貨物輸送の遅れについて会社は以前、「諸設備や港湾、中継地点など世界的な供給網の未整備という構造的理由による」としてきたが、最近は極端に難しい採用状況を理由に上げており、採用できても職業訓練直後に作業の厳しさから退職者が増加するなど、特にエンジニアと車掌の確保が難しいという。

 会社側は高額ボーナスなどで採用を増やそうとしているが、人手は集まらず、却って他社への転出が目立つという。報酬面では年収130,000ドルという高額にもかか、パンデミック以前から言われた過酷な作業と「従業員は使い捨て」の印象が定着してしまった。
パンデミック以降は特に、家庭やレジャーを重視する人が増え、私用電話禁止や出勤時間の厳守、会社呼び出しには私事を捨てても従うなどの厳しい就業規則を嫌うようになったと言う。ノーフォーク・サザン社では車掌訓練生への日給を185ドルから200ドルに増額するなど改善に努力しているが、効果は薄いという。

 貨物輸送を規制する連邦陸上輸送委員会(STB)によれば「鉄道各社は過去6年間、人員を45,000人、29%削減した。精密鉄道 スケジュール(PSR)と呼ばれる計画の下、少ない車両と人員、費用の削減、設備の効率利用を目指して贅肉落としの努力を重ね、長蛇の車列採用などで利益は上昇を見せている」とされる。

 しかしカリフォルニアの中継駅では、貨物仕分けの停車時間が7月第1週に56.4時間に達し、昨年同期の30時間を大きく上回るなど、貨物輸送の遅れが際立ち、荷主からの苦情が一段と高まっていると言われる。

カリフォルニア州の自営トラック運転手が新労働法に反対デモ

 7月21日のニューヨーク・タイムズ(NYT)、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、トランスポート・ドライブ(TD)紙などが「カリフォルニア州の自営トラック運転手が新労働法に抗議して、西海岸3位のオークランド港に通じる幹線道路を閉鎖して、抗議デモを展開中」と報道した。

 新労働法は「ギグワーカーを独立契約者ではなく従業員として扱い、最低賃金や残業手当などの賃金労働条件を保障する」もので、カリフォルニア州の住民投票に基づく2019年の法改正で成立した。ところが、自営トラック運転手は「労働法の適用で自由な営業が阻害され、生活が成り立たない。行政命令によりニューサム知事が法律の実施を停止して、協議に応じるよう要求する」としている。 これに対し州政府は「数万名のトラック運転手には辛いかもしれないが、州住民や各企業の利益のためにも、労働法の実施を休止するわけにいかない。」と言明した。

 2019年の労働法改正については、法案成立直後に、同じギグワーカーを使用するウーバーやリフトなどのインターネット・タクシー会社が反対キャンペーンを展開。2020年の住民投票では一転して会社主張を認める賛成多数となった。しかし2021年のカリフォルニア州最高裁はこれを違憲と認定。会社による直後のアピールで審議は未了となっていたが、今年の6月30日、最高裁はトラック業界からの再審議提訴の受理を正式に拒否したことで、AB5と呼ばれる新労働法が実施の運びとなった。

 カリフォルニア州では、トラック運転手の大多数を占める70,000名が独立業者として営業しており、自己保有トラックを使って特定企業との仕事を請け負う。ところが今回のAB5では、特定企業の従業員資格を選ぶか、もしくは独立業者として登録し直しブローカーを通じて仕事を確保することになる。
後者の場合、今まで利用してきた契約先の業務ライセンスや団体保険割引の特典を失い、独立業者としての新規登録や割増保険料などで20,000ドルの資金が必要になると言われる。オーナー運転手協会(OOIDA)では「新労働法の下で仕事を継続するための政府当局の説明がない」と語るが、多くの運転手が退職を考えているとも言われる。

 15人の自営運転手と契約し15人の従業員を雇うある会社は「新規で従業員を雇い、トラックを購入するには多額の費用が掛かる。自営を続ける運転手の運行許可と保険取得に協力できるのか、弁護士と相談しているところだ」というが、貨物業界に詳しいある弁護士事務所は「業界を刷新するこのAB5実施には未だ数か月が必要だろう。」という。

 弁護士事務所の指摘の通り、17日のTD紙は、「新労働法に関する政府関係者による説明会では、質疑応答に答え切れない多くの疑問点が残った」と報じているが、政府はその間「必要な情報提供と減税措置、財政的援助を行う」と声明。法案関係者は「運転手をフルタイム、パート従業員として扱い、柔軟なスケジュール設定も可能だ」とコメントした。

 トラック運転手の一部はチームスター労組に所属するが、同労組は「トラック業界は運転手を独立業者と区分することで適正な賃金労働条件を付与せずに来た。AB5についての問題を叫ぶのはトラック企業や協会の脅しだ」と述べる。

 数々の情報の中で浮かび上がってきたのは、ギグワーカーの労働保護と並んで、自由な働き方を選ぶこうした労働者を助成するのか、規制するのかの方向性である。急増するギグワーカーを労働面で保護しながら、自由な働き方を保障するという課題については多くの問題がありそうだ。

 会社側は高額ボーナスなどで採用を増やそうとしているが、人手は集まらず、却って他社への転出が目立つという。報酬面では年収130,000ドルという高額にもかか、パンデミック以前から言われた過酷な作業と「従業員は使い捨て」の印象が定着してしまった。 パンデミック以降は特に、家庭やレジャーを重視する人が増え、私用電話禁止や出勤時間の厳守、会社呼び出しには私事を捨てても従うなどの厳しい就業規則を嫌うようになったと言う。ノーフォーク・サザン社では車掌訓練生への日給を185ドルから200ドルに増額するなど改善に努力しているが、効果は薄いという。

 貨物輸送を規制する連邦陸上輸送委員会(STB)によれば「鉄道各社は過去6年間、人員を45,000人、29%削減した。精密鉄道 スケジュール(PSR)と呼ばれる計画の下、少ない車両と人員、費用の削減、設備の効率利用を目指して贅肉落としの努力を重ね、長蛇の車列採用などで利益は上昇を見せている」とされる。

 しかしカリフォルニアの中継駅では、貨物仕分けの停車時間が7月第1週に56.4時間に達し、昨年同期の30時間を大きく上回るなど、貨物輸送の遅れが際立ち、荷主からの苦情が一段と高まっていると言われる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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