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No.677(2022/7/15)
英国で鉄道ストライキ

 6月21日のニューヨーク・タイムズ(NYT)、ニューヨーク・ポスト(NYP)、REUTERSなどが「英国で数十年来となる鉄道ストライキが発生し、数千万人の足が奪われた。ストライキは3日間の予定」と報じた。

 30年来のこのストライキは労働協約の交渉決裂を受けて40,000名が参加して行われ、英国全土の鉄道網が停止した。他方、ロンドンでは地下鉄が年金問題を巡ってストライキに入ったがバスは運行している。

 労働組合は全英鉄道・海事・運輸労働組合(RMT-ミック・リンチ事務局長)で、経営側は全国網を持つ国有のネットワーク鉄道ほか数社の民間鉄道である。組合要求は最低7%の賃上げだが、これに対する会社回答は2%、さらに人員整理を条件に1%上乗せと言われる。

 試練ともなるこのストライキに対しボリス・ジョンソン首相は労働組合の自制を呼びかけているが、直接介入は避けている。しかしNYPによると、シャップス運輸大臣が「ストライキ中でも、代替労働者による最低限の運行を可能にする法改定」を示唆した。

 ストライキは食料品やガソリンなど高騰する物価と賃金との格差拡大に抗議し、物価に見合う賃上げを要求するものだが、物価は昨年12月に7.1%を記録した後、4月には年率11.1%という1982年以来の高騰を示した。しかし首相は運賃値上げには否定的である。
 他方、物価問題では教員組合、航空労組、医療関係労組、清掃労働者、更には刑事部門の弁護士組合などにもストライキの危険が囁かれている。

 このため鉄道利用客の多くは自宅勤務で対応しているものの、自家用車や自転車通勤の急増による交通混乱で救急車の運行が大幅に遅れるなどの事態も起きている。世論調査ではスト賛成37%に対し反対45%、年長者に反対が多く、若年層に支持が多いと言われる。

 物価上昇の背景にはパンデミックとロシアのウクライナ侵攻による供給網の混乱があり、石油、天然ガス、小麦や肥料などが数十年来の高騰を示す中、英国政府も家庭への財政援助に乗り出しているが、賃金と物価のスパイラル上昇も大きな懸念となっている。

 インフレは英国だけでなく欧州全体の問題でもあるが、ベルギーでは20日に空港スト、ドイツでは大労組による大幅賃上げ要求、フランスでは年金改革に対する抗議が起きている。
 英国ではコロナ問題から立ち直ったあと、労働力不足、供給網の混乱、インフレ、ブレグジット後の通商問題などが重なり、リセッションの危機が言われ始めた。

 なお、6月25日のWSJの報道では、「ストライキを指導するミック・リンチ事務局長のウイットに富みながらも冷静で実務的な対応に人気が高まり、労働党の次期指導者として期待が強まった」と伝えている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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