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No.675(2022/6/27)
ベトナムの最低賃金、2年半ぶりに引上げへ

 6月12日、ベトナム政府は、同国の最低賃金について、7月1日から平均で約6%引上げることを決定した。この最低賃金引上げは、政労使で構成される「国家賃金評議会」で4月12日にとりまとめられた内容である。今回、実施までに時間を要した理由は、4月の賃金評議会での確認内容について、経済界が改めて強い不満を示し、政府に見直しを求めたことによる。

 ベトナム国営の英字紙、「ベトナム・ニュース」などによれば、今回の最低賃金引上げについては、ファム・ビン・ミン副首相が6月12日に署名し、政令等が交付された(政令第38号)。ベトナムの最低賃金は4つの地域ごとに定められるが、7月1日から引上げ後の月額の状況はつぎのとおりである。

  • 地域1(ハノイ、ホーチミンなど)468万ドン(約2万7100円)、5.9%増
  • 地域2(ハノイ周辺、ダナンなど)416万ドン(約2万4100円)、6.1%増
  • 地域3(クニン省、バグザン省など)364万ドン(約2万1100円)、6.1%増
  • 地域4(地域1~3以外の農村部など)325万ドン(約1万8800円)、5.9%増

 4月の国家賃金評議会では労使の合意づくりが難航した。労働者を代表する「ベトナム労働総同盟」(VGCL)は、最低賃金がこれまで2年半にわたり据え置かれていることから、平均で7~8%の引上げが必要と主張した。これに対して、ベトナム商工会議所(VCCI)は、コロナ禍による影響を受けた企業も多いことなどから、引上げは3~6%にとどめ、かつ実施は2023年1月からにすべきとアピールした。これらの労使の主張を踏まえ、国家賃金評議会では、前述のとおり確認していた。

 しかし、経済界は、その後に、政府に対して改めて最低賃金引上げの見直しを求めた。その背景にはウクライナ危機に伴う物価の上昇などがある。ベトナムの消費者物価は4月に2.64%上昇したが、5月には2.86%に増加した。このためVCCIは、最低賃金を引上げることは、企業の経営を圧迫し倒産をもたらすと訴えた。中小企業者たちも、人件費の増加やコロナ禍での収入減に追い打ちをかけると述べ、最低賃金引上げの見直しを要求した。
 ベトナム政府は、このような状況のなかで、最低賃金の引上げを、7月1日に行うことを決断した。企業にとっては、実施まで一ヶ月もないかたちの決定であり、7月以降の人件費の増加への対応が求められる。また、ベトナムの最低賃金は、コロナ禍以前は毎年引上げられていたことから、今後、2023年1月でのさらなる引上げが論議される可能性もある。コロナ禍の動静にもよるが、ベトナムの最低賃金には目が離せない状況が続くものと思われる。

※ベトナム通貨ドンのレート 1ドン=0.0058円(2022年6月20日)

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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