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No.673(2022/6/13)
連邦労働関係機関(FLRA)で民主党が多数派を回復、ゲーム業界に広がる労組気運、任天堂に労組潰しの訴訟

連邦労働関係機関(FLRA)で民主党が多数派を回復

 5月13日のワシントン・ポストなど数紙が「12日の上院議会が民主党指名の連邦労働関係機関(FLRA)委員を承認し、民主党が定員3名中の2名の多数を回復した」と報じた。
FLRAは公務員を対象にする労使関係審査機関であり、民間労組対象には全国労働関係委員会(NLRB)がある。

 承認されたのはスーザン・グランドマン氏で、任期切れの共和党アボット委員に代わる。承認は賛成50ー反対49、民主党議員1名が棄権、マーコウスキー共和党議員(アラスカ州)が賛成して成立した。グランドマン氏は幾つかの連邦公務員労組の役員やオバマ政権下の公務員表彰局議長を務めたが、その任命でトランプ大統領時代の数々の反労働組合的判断が覆ることになる。

 連邦公務員労組は一斉に歓迎の意を表明。全国財務従業員労働組合(NTEU)のリアドン会長は「従来のFLRA多数派は法的手続きを無視して公務員の声を抑え込もうとしてきた」と言明。アメリカ政府従業員連合会(AFGE)のケリー会長も「この重要な機関に尊厳と公正を回復できることになる」と声明した。

 民間労組とは異なり、連邦公務員にはストライキ権がなく、給与などについての団体交渉権はないが、雇用条件については交渉できる。現在、コロナウイルスによるテレワークが主要課題だが、その期間などが討議されている。連邦公務員は現在210万人を数える。

 民主党任命のもう一人はドベスターFLRA現議長だが、2019年7月の任期にバイデン大統領からの延長指名を受けて上院で審議中である。各委員の任期は5年だが、同一政党から3名の委員任命は出来ない。

ゲーム業界に広がる労組気運、任天堂に労組潰しの訴訟

 5月23日のニューヨーク・タイムズ(NYT)は「ゲーム業界大手のアクティビジョン・グループで北米業界初の労働組合が結成された」と報じた。
 労働組合が結成されたのは同社の人気ビデオゲーム、コールオブデューティを開発した同社傘下のレイブン・ソフトウェア社(従業員230名)の品質保証部門28名によるもので、全国労働関係員会(NLRB)監督の下、投票結果は賛成19票、反対3票であった。
同スタジオでは女性へのセクハラなど労働条件が問題視されていたが、労組結成気運が高まったのは昨年12月に約10名の労働契約が一方的に停止され、全米通信労組(CWA)の助力の下、ゲーム・ワーカーズ・アライアンス(GWA)が結成されたときであった。

 現在、アクティビジョン社(従業員10,000名)はマイクロソフト社による600億ドルの買収交渉中にあるが、労組宣言が出された直後に1,000名の品質保証契約労働者に対しフルタイム資格と最低時給20ドルを提案した。ただし、労組結成中の労働者には不当労働行為に当たるとして適用はしないと述べた。同社は労働組合結成についてはスタジオ全員を分母とすべきで、28名の労組結成は認められないと主張しているが、NLRB地域事務所では同社が従業員による賃金労働条件についての会話を禁止したこと、過剰に従業員を監視下に置いたことを重く見て、同社の主張を退けた。

 近年、ビデオゲーム業界では低賃金や性差別、12~14時間のシフト労働、期限間近の急仕事などに大きな不満が言われてきた。こうして2018年にゲーム・ワーカーズ・ユナイト(GWU)が結成されて各地に支部を展開。2020年のライオット・ゲーム社の2,000名従業員による性差別訴訟では1億ドルの賠償金を支払う和解が成立。去る4月にはカナダのバイオウェア社の契約労働者が労組結成を宣言した。また著名企業のベライゾン社ではシアトル店での労組結成投票が決まった時に、最低時給を20ドルに引き上げるなど労組阻止の動きも出ている。

 任天堂については4月20日のワシントン・ポストやザ・ヴァージが「アメリカ任天堂の派遣従業員が労組結成を理由に解雇されたとして、訴訟を起こした」と報じている。

 これに対し、任天堂(ワシントン州レドモンド)は「訴訟の契約社員は企業機密情報を漏洩して解雇された。労働組合結成については知らない。NLRB調査には協力する。任天堂は全社員と契約社員の労働環境整備には全面的な配慮を図っており、雇用問題は深刻に受け止めている。」と言明した。1935年の全国労働関係法で、労働者は賃金労働条件を団体交渉する労働組合結成の権利を与えられている。

ザ・ヴァージによると訴訟内容は
1)従業員の労働組合活動を監視ないし監視の印象を与える行為をしたこと
2)賃金労働条件の討議という法的に保障された活動を理由にした解雇
3)労働組合加入ないし支持を理由にした解雇
の3点である。

 こうしたアクティビジョンなどのゲーム業界における組織化の動きについてNYTは、ゲーム業界労働問題専攻のカナダ・オンタリオ州ウェスタン大学のウエストスター助教授の発言として「ゲーム業界の大量の労働者が未組織にある中で、今回のアクティビジョンのケースはCWAなど大手労働組合に対し絶好の参考例を示すものとなった。また、労働組合が欲しいと願う少数グループの契約労働者にも身近な事例を示した。これから大手業者の組織化に取り組むときの見本になる。」とするコメントを紹介した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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