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No.663(2022/3/31)
米国野球大リーグ(MLB)の労使交渉が妥結、4月7日にシーズン開幕

 3月10日のニューヨーク・タイムズ及びロサンゼルス・タイムズなど各紙がMLBの労使交渉妥結を報道した。
 妥結により、史上2番目の99日間の長期ロックアウトが終了し、5年間の労働協約に合意が成立した。春季トレーニングは今週からフロリダとアリゾナで始まり、4月7日から30チームによる全試合162ゲームが開幕される。延長戦の走者2塁スタートは廃止され、また各チームがシーズン中に少なくとも1回以上は対戦することになる。

 労使交渉に当たっての選手側の優先要求項目は、①贅沢税(基準額を超える総年俸を支払う球団が超過分の一定比率を支払う罰金)が給与上限の制限とならないこと、②若手選手が市場価値に見合った待遇を受けること、③FA権獲得までのサービスタイム(FA権取得には通常6年、年俸不満を訴える調停資格には3年が必要)の期間短縮、④タンク戦略(意図的にチームを弱体化して、勝率の低い球団に与えられる新人ドラフトの上位指名権を利用する戦略)の余地をなくすこと等だったが、贅沢税については増税なしに2,000万ドルの積み増し、また3年の年俸調停に満たない選手については報酬の増額を受け入れた。

 オーナーの目的は収入の最大化だが、プレーオフを現行の10チームから12チームで行うこと、選手のユニフォームやヘルメットの広告掲載制限をなくすことなどが合意された。
 しかし、MLB連盟のコミッショナーであるマンフレッド氏による強引とも思える交渉に反感も強く、合意成立後、同氏は直ちに選手会のクラーク委員長に亀裂の修復を呼びかけた。事実、今回の合意で、選手側の賛成は26票、反対は12票だったが、そのうち30チーム代表による賛否が26票対4票だった反面、交渉に当たった執行委員8名は全員が反対するなど、交渉委員の反感は強かった。

 ただ交渉に当たった執行委員には高額報酬を得ている者が多く、最低でも3,700万ドル。8名のうち4名が億単位の報酬を得ているが、今回の賛成多数は低収入選手の声を反映するものとなった。なお、MLB選手の給与の中央値は数年前の165万ドルから昨年115万ドルにまで低下している。

 今回の協定では、最低給与は昨年の57万500ドルが今年は70万ドル、2026年には78万ドルへ引き上げられる。贅沢税の基準額は昨年上限の2億1,000万ドルが今年は2億3,000万ドル、2026年には2億4400万ドルとなる。球団オーナーのフランチャイズ料は値上がり続けており、放映権などのメディア権の取引も増加するなか、選手もそれらの収入の配分を受けることは当然だろう。

 一方で、新人選手への配分増加の結果として、中堅選手への給与は減少の傾向が出てきた。また、選手をマイナーリーグで飼い殺しにしない対策として、新人王投票での上位2位までのルーキーには1年のサービスタイムの付与、またマイナーとの降昇格回数の制限が同意された。調停資格前の選手には5,000万ドルのボーナス・プールの分配が設けられた。外国選手対象の国際ドラフトについては7月末までに選手会の賛成があれば、クオリファイング・オファー(トップ選手がFA移籍した場合のドラフト指名権の譲渡)を撤廃して、ドラフト制度を導入する。
 その他、投手への負担を避けるための両リーグ共通の指名打者制度、ドラフトについては同一チームが数年間低迷してもトップ指名を保障することを避けるために上位6名についての抽選制度を導入する。

 今回の協定で特筆すべきは、2023年に設置される合同委員会である。現役選手4名、審判1名、MLB代表6名からなる委員会がルール改訂を審議して、ベースの拡大、ピッチクロック導入、守備シフト問題、ストライクゾーンの自動判定などのルール変更を決定、45日以内に実施に移すという選手の意見受け入れ制度を作る。
 以上が合意内容のあらましである。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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