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No.661(2022/3/7)
韓国で労働者による経営参加の法制化など新法策定続く
~今後の展開については大統領選挙の結果が影響か~

 1月11日、韓国の国会で、公共部門での労働者の経営参加(「労働理事会制度」)に関する法律(「公共機関の運営に関する法律」の改正)が成立し、6ヶ月後に施行されることとなった。この制度は、公営企業に労働者の経営参加を義務づけるもので、欧州諸国の制度等をモデルとしている。労働組合の支援を受ける文在寅政権が推進してきたもので、与党の「共に民主党」は、今後、対象を民間企業に広げたいとしている。

 韓国の「東亜日報」などによれば、労働理事会制度は、文大統領の選挙公約に含まれており、労働者代表が組織の意思決定に参加する制度である。労働者の経営参加を国際的にみると、監査役に加わって企業経営をチェックするかたちと、企業の意思決定に参加するものがあるが、今回の制度は後者に相当する。法案を提案した「共に民主党」は、「新しい制度の導入により、労使間の葛藤を少なくして企業の運営を円滑にし、社会的費用も減らす意義がある」としている。

 この制度については、労使の見解は大きく隔たっている。経済界は、労働者の利益だけを主張する役員が経営に参加すると、企業の重要な意思決定を遅らせ、競争力を損なうものとして反対している。一方、労働組合は、取締役会に労働者代表が参加することにより、経営の透明性を高め、支配的な株主をけん制し、組織のガバナンスが改善されるとして支持している。

 また、韓国では、昨年の1月5日に成立した「重大災害処罰等に関する法律」(「重大災害法」)の運用が厳格化されており、経営側からの批判がある。この法律は、労災による死亡事故が発生した場合、経営責任者または労働安全対策責任者には、1年以上の懲役または10億ウォン(約9600万円※)以下の罰金を課すとしている。さらに、労災事故が下請会社で発生した場合に、元請企業の事業主もその対象になりうる。

 なお、韓国では、3月9日に大統領選挙が行われ、現与党「共に民主党」の政権が継続するのか、あるいは現野党「国民の力」などの政権に交替するのかが争われる。これは、「労働理事会制度」、「重大災害法」をはじめ、文政権が制定あるいは強化した労働関係法の今後の運用に大きな影響を与えることが想定される。(了)

 ※1ウォン=0.096円 (2月23日レート)

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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