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No.660(2022/3/4)
メキシコGM工場に新労働組合が誕生、ワクチン反対のカナダ・トラック運転手の首都占拠続く、抗議は世界各国に伝播、米政府タスクフォースが労働組合強化の答申を提出

メキシコGM工場に新労働組合が誕生

 2月3日のウォールストリート・ジャーナル、およびニューヨーク・タイムズは「メキシコ中央部のシラオ市のGM工場において、従来のメキシコ労働組合連盟(CTM)に代わり、新しい独立労組となる全国自動車労働者組合(SINTTIA)が投票率87.9%、投票総数5,389票のうちの4,192票を獲得して承認された」と報じた。

 同工場では昨年にも労働組合選挙が行われてCTM労組が承認されたが、米国通商代表部メキシコ事務所が選挙に不正ありとして、US・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の労働紛争処理強制規定に基づき、苦情を申し立てていた。新労組の承認を受けGMは「民主的に選ばれた新労組と早期に新協約交渉開始の用意がある」と言明した。

 メキシコの労働条件については、「自由に労働組合選挙が出来ず、公平な賃金要求もできない状況にあり、米国の雇用を脅かしている」として、米国の労働組合と民主党が長い間批判を続けてきた。

 新労組について、全米自動車労組(UAW)は「メキシコに自由かつ公平で独立した労働組合の新時代が始まることを期待する」との声明で大いなる歓迎を表明した。AFL-CIOシュラー会長も声明で「新労組の誕生で自動車産業に新たな労働条件が作られることになる」と述べた。

 またメキシコの有識者も「新労組がこれから数多く誕生する。労働運動を変革するだけでなく、産業界をも変革する。企業には大きなチャレンジであり、企業競争力への影響も大きい」と述べる。米国の労働指導者たちは、GM新労組の誕生がメキシコ及び周辺諸国の労使癒着による低賃金打破の糸口になればと期待する。

 メキシコでは20世紀の大半を通じて一党支配が続き、労働組合は政府と癒着。政府は労働組合を産業企業に対する交渉の道具として利用しつつ、選挙時には企業からの与党支持と引き換えに言いなりになる労働組合を提供してきた。2019年には北米自由貿易協定に代わるUSMCAに基づき、労働法を改正して無記名役員選挙などを導入、また現存各企業の労働協約についての再投票などを定めたが、癒着の状況は今も続いている。

 今回、海外からの支援も得て承認されたGM新労組が真の独立労組なのか、依然として政治利害に縛られるかが、今後問われるものとなる。

ワクチン反対のカナダ・トラック運転手の首都占拠続く、抗議は世界各国に伝播

 1月29日、カナダ全土から約500台の大型トラックが首都オタワに終結して道路を占拠した。これは、カナダ自由党政府によるアメリカ・カナダ国境通過のトラック運転手に対する新型コロナワクチン接種の義務付けに反対する抗議活動である。終息の兆しは見えておらず、その上、事態は諸外国へと広がり、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、フランスへと伝播している。

 カナダの抗議活動を組織したのは"フリーダム・コンボイ2022"(FC)と呼ばれる団体だが、参加者の一人は「ワクチン接種だけで家族を養うための働きを止めるのはおかしい」と主張する。またFC の主導者は「事を平和裏に運び、荒立てるつもりはない。出来るだけ長くデモを続け、自由を取り戻す」と語る。

 他方、ジャスティン・トルドー首相は「大多数の国民が接種している中で、この少数意見を受け入れる訳にはいかない」と述べ、米国も同様に1月22日、未接種カナダ運転手の米国入国を禁止した。カナダの世論調査でも大多数がワクチン接種の義務化と未接種者の公共施設立ち入り制限に賛成している。

 しかし、2月9日にはデトロイトとオンタリオ州ウインザー市を結ぶアンバッサダー橋が抗議トラックで閉鎖され、自動車部品などの輸送が止まった。フォードやGM、 ホンダ、トヨタなど各社では減産を余儀なくされ、カナダ労組のUNIFOR によると、休業に追い込まれた中小部品企業では労働者が無給となった。

 オタワ警察は交通違反チケットやディーゼル燃料などの補給の遮断、オンタリオ州首相は非常事態を宣言して10万ドルの罰金や刑罰を示唆したが、沈静化は見られない。警察官の姿も少なく、トルドー首相は軍隊の導入を拒否している。

 FC側はウエブサイトを通じての献金で1,000万ドルを集めたと言われるが、支援者は米加両国にまたがる。ただ当該ウエブサイトは「平和抗議が道路占拠に発展したため、献金は支援者に返金する」と述べている。

 ニューヨークタイムズは2月7日の報道で「カナダ運転手の抗議活動は世界各地の極右活動家たちに支持を広げており、米国、豪州、ドイツなど各地からの賛同の声がSNSに寄せられた。或るフェイスブック(FB)での動画再生回数は120万回、別のFBでは70万回と言われるが、同社は規約に反するとしてコンボイ関係の数グループを削除した」と伝えた。

 8日には同様の抗議デモがニュージーランドに波及。9日にはフランスのニースを出発した抗議トラック数十台がパリ市内で警察の催涙ガスにより集結を阻止されたが、極右政党の国民連合党首、マリーヌ・ルペン氏が抗議活動の支持を表明した。

 13日にはカナダCTVが「ウインザー警察はアンバサダー橋で運転手10数名を逮捕し、通行が再開される」と報道、14日のNYTは「手緩いと批判されたトルドー首相が国家公共秩序緊急事態を宣言した。これにより、デモ参加者の銀行口座凍結やオタワやアルバータ州で抗議する数百台トラックの接収が可能になる。宣言は1988年に現首相の父親ピエール・トルドー首相が行ったケベック・テロ事件以来のことになる」と伝えている。

政府タスクフォースが労働組合強化の答申を提出

 2月7日のニューヨーク・タイムズ、14日のOnLabor(ハーバード法科大学院関係者によるブログサイト)などが、昨年4月の大統領行政命令で発足の政府タスクフォースが提出した”労働組合強化のための答申”を伝えている。

 タスクフォースはハリス副大統領を議長とする20人の閣僚級人物で構成され、労働者の権利、労組結成、団体交渉力の強化を主題に審議を重ねてきたもので、約70項目の勧告を行った。

 OnLaborはそのうち約60項目を以下のように4区分している。
 1)米国最大の雇用主である連邦政府における労働基準の改善と組織化の促進
 2)行政機関による民間企業への組織化促進と団体交渉権の促進
 3)連邦政府が取引する民間企業の選択基準を通しての労働組合支援
 4)行政機関挙げての労働権・労働条件改善の啓蒙活動

 勧告は米国最大の雇用主である連邦政府とその契約企業の影響力を力にして、各種労働情報の定期改訂、組合費支払の容易化、従来認められなかった組合オルグの使用者用地への立ち入り許可、労組企業と非労組企業との格差の開示、反労組弁護士についての情報開示、労組敵対行為が政府調達遅れにつながる可能性の企業排除、更には国防省や労働省による労組敵対企業への支出禁止などを勧告している。

 また重要勧告には、1935年全国労働関係法の労働権保護規定をどの様に具体化してゆくかについて、連邦政府各部門及び契約企業における労働組合結成促進の法制化、および政府と民間企業における最適モデルの提示が提案されたが、タスクフォースはそのための追加答申を6か月以内に提出する予定である。

 バイデン大統領は歴代大統領の中でも最も労働組合に好意的で、トランプ前大統領が任命の反労組派の解任、反労組規約の廃止、数十億ドルの労働組合年金基金への支援に署名した。昨年のアマゾン組織化の際にも労働者への脅迫を中止するよう警告を出している。

 またバイデン大統領は先週、3,500万ドル以上の連邦建設契約について、賃金労働条件に関する労使合意協定を条件とする行政命令を出したが、それ以前に契約企業の最低賃金を従来の10.95ドルから15.00ドルに引き上げる行政命令も出している。

 使用者による脅迫や妨害を排除して労働組合結成を支援する法案には団結権保護法(PRO)があるが(2021/6/7 JILAF記事最終部参照)、同法案は下院を通過したものの上院では民主党議員からも反対があり通過できていない。今回のタスクフォース勧告の立法化が何処まで進むのか、今後の推移に注目したい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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