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No.659(2022/2/15)
テスラ・ドイツ工場の完成間近、IGメタル労組の懸念、英国健康大臣が医療労働者へのワクチン義務化の見直しを表明

テスラ・ドイツ工場の完成間近、IGメタル労組の懸念

 1月3日の欧州オートモーティブ・ニュース(ANE)、1月20日のニューヨーク・タイムズ(NYT)などが、ベルリン近郊に建設中のテスラの電気自動車工場が完成に近づき、来月には労働者協議会の選挙が行われる状況を伝えた。

 ヨーロッパで最初となるテスラ・ドイツ工場建設が官庁の審査や環境団体の訴訟などで、計画から数か月遅れて完成に近づきつつある。
 これについてドイツ金属産業労働組合(IGメタル)ベルリン地域のディーツ委員長は「工場開設に当たり、労働者協議会19名の役員選挙が2月28日に予定される。そのため、IGメタルは工場近くに事務所を開設して組合員との協議に当たっている」と述べた。
 またANEは「初任給が業界水準から20%低いこと、今までにないストック・オプションと臨時ボーナス制度があること、採用者がこのフレキシブルな報酬制度を受け入れられるかどうか迷っている」とのディーツ委員長の話を伝えた。

 ドイツでは労働者協議会が工場操業の諸規則を制定することになるが、労働組合員が協議会役員を務めるとしても、労働組合の直接関与を受けるわけではない。
 一方、ブランデンブルグ州政府は、70億ドル工場の建設申請書類が昨年12月に取り揃って最終承認段階にあり、環境団体の水利訴訟からの影響はないだろうと説明している。

 同工場の予定人員は12,000名だが現在までの採用者は1,800名。管理職とエンジニアが中心で、大多数を占める一般労働者の採用は後になる。そのため、ディーツ委員長は「労働者協議会が「労働者」を正当に代表しない恐れがある。労働者は労働者協議会を通じて要望を伝えることが出来る。そのためには協議会が労働を正当に代表することが大前提だが、テスラでそれが出来ているかを厳密に見ていきたい」と語る。しかし、同委員長は組合員数および協議会への立候補については明らかにしていない。

 米国では労働組合を嫌うテスラだが、強い労働組合の歴史のあるドイツで労働組合を拒否することはできない。ドイツの労働組合加入は個人の自由意志だが、充分な数が集まれば経営者をして労働組合との協約を産業別に締結させることになる。

 テスラ工場の計画では最終的にモデルYの年産50万台を予定しているが、当面は250台のプロトタイプから改良を重ね、その後2,000台の生産からスタートの予定である。正式な工場開所日は明らかでないが、政府の最終承認が近いこと、テスラのマスク社長が2月中旬にドイツを訪問予定とも報じられている。

英国健康大臣が医療労働者へのワクチン義務化の見直しを表明

 1月31日のニューヨーク・タイムズ、及びロイターなど数紙が英国のジャビッド健康大臣の発言として「現場医療労働者へのワクチン接種義務化の必要は薄らいだ。企業や労働組合の唱えるコロナワクチン義務化が深刻な医療労働者不足を招く恐れがあり、見直しが必要だ」との発言を報じた。

 英国では今まで公営医療機関の労働者に対し、第一回接種を2月3日まで、2回目を4月1日に終了するよう義務付けているが、オミクロン株がデルタ株より軽症であることが判明する中で異なるアプローチを模索した。
 同大臣は「政府は毎週、慎重にコロナ対策の検討を進めながら、対応を法的強制から個人責任に移してきている。パンデミックを通じてのワクチン接種や検査、監視により、このような防衛が可能となった。ワクチン接種がなければ勤務できないとの強制は必要なくなった」と説明した。

 英国では医療労働者の95%が接種を受けているが、それでも77,000名が未接種であり、彼らを対象に企業や労働組合は4月1日期限の接種を唱えてきたが、接種を忌避する人達による人手不足が懸念されている。診療待ち患者は記録的数字に達しており、人手不足は過去最悪、早急な対策が叫ばれている。

 王立看護師・助産婦専門学校は「この危機の中で看護師を解雇する事態は悲劇的な結果を招く」と指摘してワクチン義務化期限の延長を要求している。介護職も同様の事態にあり、人手不足が深刻化している。

 毎日の新規感染患者の減少が報告される中、英国は体制をエンデミック対応に切り替え始めている。パンデミックに伴う対策も先週中止しており、2月11日からはワクチンを3回接種済の旅行者には検査が免除された。

 同大臣はまた「コロナはこれからも続く。ゼロ・コロナの国、開放政策の国もある。英国は世界に先駆けてコロナと共生する姿を示してゆく」と語る。その上で、同大臣は議会での反論に答えて「デルタ株とオミクロン株の状況は異なる。状況に応じて釣り合いの取れた対策を講じていきたい。今後も方針の変更は有り得る」との見解を述べた。

 デンマークでのコロナ関連規制撤廃など、コロナとの「共生」に向けての模索が始まる中、日本を含め労働界がどう対応していくか、今後の課題である。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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