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No.657(2022/1/25)
アイビー・リーグ大学のUAW労働者

 12月18日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の社説、11月24日のニューヨーク・タイムズ、11月30日のコロンビアデイリー・スペクテイター紙などが、11月3日から続いているコロンビア大学・大学院生のストライキについて報道した。同大学はハーバードやイェール大学と並ぶ米国名門8大学の一つだが、ストライキは3月にも起きており、当時の交渉合意が組合員から否決されて、5月に交渉委員全員の10人が辞任する事態も起きた。

 同大学では、全米自動車労組(UAW)が組織する3,000名の大学院生・大学生が授業や採点、個人指導などの分野でアシスタントとして働いているが、今回は新交渉委員を先頭にするストライキで、多くの授業がキャンセルを余儀なくされている。
 最近、各大学の労働組合の活動が活発化しており、ニューヨーク大学では昨春、ストライキを経て交渉が妥結、ハーバード大学でも10月に3日間のストライキが見られた。
先週にはカリフォルニア大学で調査関係の大学生17,000人がUAWに加入し、これにより、UAW組合員の4分の1の100,000人が大学関係の組合員となった。

 コロンビア大学では交渉の行き詰まりから11月22日に調停に入ったが、賃金や医療費、人種差別や女性差別、チャイルドケア問題などが絡み、合意が形成できないでいる。
 UAWの要求は年収45,000ドル、時給労働者には26ドルと年間3%の昇給だが、マンハッタンの独身者の生活には最低45,285ドルが必要と説明している。

 大学は今年春に17ドルを提案したが拒否され、最近になって20ドルを提案した。UAWはコロンビア大学が昨年1年間で31億ドルの利益を上げており、3年間の賃上げ要求額は利益の3%にも満たないと述べてる。

 またWSJは「コロンビア大学の授業料は63,530ドル、寄宿舎代を含めると82,584ドルとなり、4年間で家を買える程の高額である。ボリンジャー総長の年収は460万ドル、フルタイムの教授の年収は268,000ドル。しかし、授業実施への多大な力でありながら、学生ローンの返済も出来ずに低待遇にあえぐ学生に対して、賃上げは出来ないとする大学の態度は固く、ストライキ学生には仕事を提供できないと言明した。UAWは労働関係委員会に不当労働行為で提訴するとしている。学生への待遇は民間企業の工場労働者よりも低い。米国の不平等についての講義の際に、受講者である学生に聞いてみるが良い」と皮肉を交えて伝えた。

 さらに、教授などによる差別待遇については、外部識者による仲裁裁定が要求されたが、大学側は内部委員会で充分としている。こうした状況に、ニューヨーク州の民主党議員7名は総長に書簡を送り、誠意ある交渉を要望し、大学教授陣も学生との連帯を表明した。

 12月24日にコロンビア大学のボイス学長はWSJ紙に書簡を送っている。
 「貴紙は、学生への低待遇を述べているが、大学は今月初め、3,000名組合員に対し5年間で1億ドルに上る昇給を提案している。また博士課程の学生には授業料免除、宿舎も大学貸与、家族全員への医療費は全額大学負担であり、給与総額は年間10万ドルに達する。教授時間も自身の調査研究を妨げないよう週20時間以内に抑えて、夏休みもある。フルタイムの民間企業とは比較にならない。コロンビア大学は3,000名の組合員全員を次世代を担う教授陣として育成することを使命と考えている。」と反論した。

 1月7日、大学労使に暫定合意が成立し、年間昇給6%、最低賃金(時給)の15ドルから21ドルへの引上げ、歯科などの一部医療費の改善が約束されたと報じられている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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