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No.655(2022/1/10)
MLB連盟(野球大リーグ)が選手をロックアウト、米スターバックスに労働組合誕生

MLB連盟(野球大リーグ)が選手をロックアウト

 12月2日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、ワシントン・ポスト、及び4日のニューヨーク・タイムズ(NYT)などが12月2日から始まったメジャーリーグ・ベースボール(MLB:アメリカン・リーグ、ナショナル・リーグ30チーム)連盟による選手ロックアウトを一斉に報じた。
 ロックアウトにより大リーグの活動は停止され、選手の野球施設の利用、チームと選手の対話、FA契約などが出来なくなる。ストライキは被用者側が行うが、ロックアウトは経営側が使う手法であり、創設以来、今回が4度目となる。

 MLB連盟は継続交渉中であった5年労働協約が12月1日23時59分に期限切れとなった直後の0時1分にロックアウトを宣言した。マンフレッド連盟コミッショナーは「今回のロックアウトはオフシーズンが始まった今、2月のトレーニングキャンプ、3月31日のシーズン開催までに解決を図る最善の選択だ。1994年8月のストライキは、契約期限切れの中で9か月続き、シーズン終盤の大事な試合が開催出来なかったが、その事態は避けたい。」と語る。1994年のストライキ後、観客動員数は10数年低迷を続けた。

 これに対してクラーク大リーグ選手会代表は「このような酷い手段で選手がひるむことはない。野球の競争性を高めてファンの満足に応え、選手の権利と利益を増進させる交渉にしたい。」と声明した。しかし3月までに労使紛争が解決する保証はない。
 選手側は野球収入の配分が連盟に有利過ぎるとして、配分増加を要求しているが、連盟側はこれに強く抵抗している。

 その他の論点にはタンキング問題がある。タンキングとは低迷するチームが優勝をあきらめて主力選手を放出し、低位チームのドラフト優先権を利用して有望若手選手を低報酬で獲得して、数年後のチーム再建を図る方法だが、若手選手への低待遇などの問題がある。WSJによれば「連盟側は選手側への配分増加には反対するものの、選手間の配分調整に強い抵抗はない。ただし、FA(フリーエージェント)権獲得までの期間や年俸調停規約、チーム間の収入配分など、現行契約の基本部分の変更には消極的である」。

 またWSJは「2021年の平均試合時間が3時間11分、若者ファンの減少が問題となる中、連盟は試合時間の短縮とアクションある試合展開を望んでいる。合意点としては、プレーオフ出場チーム数の積み増しとポスト・シーズン期間の延長、ナショナルリーグへの指名打者制度などがある」と報じている。
 交渉点には上記を含めて、新人選手獲得の抽選方式、FA選手の権利獲得には経験6年間でなく29.5歳以上の年齢によること、一定給与額を超過したチームへの罰則となるラグジュアリー・タックスの変更、年俸不満を訴える年俸調停資格取得に3年を要する問題、選手会が要求する若手選手への配分増加などがある。

 先日のNHK国際報道では日本FA選手の大リーグ契約交渉の中断が報じられたが、大リーグを目指す世界の有望選手の夢と努力、そしてファンの期待を砕かないよう早期解決を強く望みたい。

米スターバックスに労働組合誕生

 12月9日のニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル,ワシントン・ポストなどの各紙が「ニューヨーク、バッファロー地域のスターバックス店で労働組合誕生」と一斉に報じた。

 全米に50年の歴史を持ち、9,000店を展開するスターバックスは高賃金と高待遇を理由に、労働組合は経営者と従業員の直接接触を妨げるので必要がないとする方針を貫いているが、去る8月、バッファロー地域の3店で労働組合結成の動きが顕在化し、労働委員会に労働組合結成申請が出され、郵便投票が行われていた。同地域では更に3店で投票申請が出されたと言われるが、委員会による投票認可は明らかでない。
 最初の3店のうち、第1店では申請署名数が僅かに法定に満たないとされ、第2店では労組反対が多数を占めた。しかし3店目のエルムウッドビレッジ店で労組結成が19対8の賛成多数で達成され、この労組はサービス従業員国際労働組合(SEIU)の下部組織、ワーカーズ・ユナイテッド(WU)に所属する。結成の動機は人員不足による過重労働と職業訓練の欠如で、この事態はパンデミックでさらに悪化、業界共通の問題とされる。

 労組に反対する経営側は従業員の説得工作を行うとともに、北米スターバックス社社長のウィリアムズ氏自身も支援に赴き、トイレ清掃等を手伝ったと言われるが、従業員は脅迫と現実離れを感じたという。
 或る近隣店は閉鎖されて、投票対象の店には必要以上の人員が配置され、労組結成意欲が阻害される状態だったとされる。

 スターバックスは「この店舗対象に地域外および臨時閉店の従業員を振り向け、同時に効率的作業ができるよう、複雑な注文にも迅速に対応できる設備改修なども行った。病気欠席者の増加と、コロナ軽減からの需要回復に対応する人員増強にも取り組んでいる。」と述べ、同社社長も「労組結成をそれほど重大事とは考えていない。私も直接店に赴き従業員であるパートナーの要望もよく聞きながら、200人を新規に補充した」と語る。

 労組が結成されたこの店で重要となるのが労働協約の締結だが、労働法は使用者側が誠意を持って交渉に当たることを定めている。契約を結ぶ義務までは定めていないが、誠意のない交渉は違法となる。労働組合が交渉で優位な契約を締結できれば、それが先例を作ることになるが、成否は労働組合の力により、成功すれば次の労組結成を促すことになる。

 スターバックスは今までにも多くの労組結成活動を経験している。2000年のニューヨーク、そして2019年のフィラデルフィアでは2名の従業員を解雇したことへの違法判決があり、ペンディングにある。米国内の直営店では全店が労組結成を失敗していたが、フランチャイズ店では成功した例もあり、カナダの直営店でも成功例がある。1980年代にはシアトルの10数店で食品商業労組が組織化に成功したが、その後解散している。

 またWSJによると「米国のレストランや食品サービス店での労働組合組織率は2%以下の低率であるが、スターバックスの全米15,500店のうち直営は9,000店、残りの6,500店が空港や食品店、カジノなどに店を置き、6,500店の半数に労働組合がある」とされている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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