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No.652(2021/12/15)
TESLAとトヨタがUAW製造のEV自動車減税に反対、USMCS違反との反対も

 11月17日及び18日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、また19日のEconomic Times紙などがバイデン政権によるUAW製EV自動車の減税政策に反対するTESLAやトヨタの見解、更にはメキシコとカナダ政府が同減税策を米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)違反と指摘したことを報じた。

 この政策は大統領の1兆7千億ドルのインフラ整備予算の一環を成すものだが、現行の電気自動車購入時の7,500ドルの税額控除に加え、米国労働組合製には4,500ドルを加算、さらに米国製バッテリーには500ドルの合計12,500を税額控除するもので、民主党キルディー下院議員などの提案による。端的に言って電気自動車購入の場合、UAW製には12,500ドル、それ以外では7,500ドルが税額控除となるが、この7,500ドルの税額控除は段階的に縮小される。
 このため、電気自動車で先行するTESLAやトヨタなど各社はこの政策が環境問題に逆行すると非難している。

 政策にはEVバッテリー充電ネットワーク整備への75億ドルの支出も含まれるが、中間所得層育成も視野に入れており、(以下WSJ)「シエラ・クラブや環境団体からは好意的支援もあると言われるが、非組合工場が立地するジョージア州やテネシー州政府などは反対である。」

 トヨタは「環境問題を政治の道具にしてはならない」とする全面広告を掲載、外国自動車メーカーの代表団体も「また議会が介入した。環境と消費者の選択を犠牲にして労働組合に飴を送る馴れ合い取引を押し付けている。」とする反対を表明した。
 これに対しUAWは「数万人組合員の雇用を守り、創出する」と歓迎しているが、部品点数が遥かに少ない電気自動車からの雇用の減少にも直面する。この点でUAWは雇用を犠牲にしないよう要求している。
グラスゴーのCOP26に参加したバイデン大統領は2030年までに新車台数の半数を排気ガスゼロにすると公約し、自動車は気候温暖化に最大の責任があるにもかかわらず、
 現在市場にある50以上車種のなかで米国製電気自動車はGMシボレーBOLTの2車種(EVとEUV)だけと言われ、広範な環境問題への対処にはならず、組合対策に過ぎないとの声もある。

 また国際面では、この政策が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に違反すると、メキシコ、カナダ政府のクレームが提起され、3か国首脳会談では「政策は投資をカナダ・メキシコから米国へ転換させ、3か国の労働組合に潜在的な悪影響を及ぼす懸念」が表明された。カナダ通商大臣は「北米自動車産業の統合性を損ない、カナダ自動車産業に深刻な打撃を与え、米国北部州の部品企業にも損害を与える」と指摘。メキシコ経済大臣も「北米生産の全部品と組み立て製品を対象にするよう要求」した。

 3か国は米国へ無関税輸出できる組立自動車の北米生産部品使用率を従来の62%から75%に引き上げることで合意しているが、カナダ自動車部品製造業協会会長は「政策は完全に間違いだ。USMCAの目標が水泡に帰する恐れがある」と言明。また10月29日には、25か国の大使からも「数百万の米国雇用が外国製自動車の生産と販売に依存している。政策は国際通商ルールにも違反し、温暖化防止への努力を阻害する」との書簡が米国議会に送付された。

 法案は米国下院で審議の後上院に送られるが、炭鉱地帯が地盤の民主党マンチン上院議員の反対もあり、難航が予測される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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