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No.648(2021/10/29)
イタリア政府が全労働者にコロナ証明を強制、その中でCGIL本部襲撃事件

 10月14日のガーディアン紙及び15日のニューヨーク・タイムズなど各紙が「イタリア政府により全労働者に対する厳しいワクチン強制措置が実施されたが、大規模な抗議活動と労働者不足を呼ぶ危険にある」と報じた。イタリアは民主主義国の中でも突出して政府権力を最大に行使してコロナを抑え込もうとしており、テストケースとして注目される。

 イタリア政府は13日、今年8月に実施したグリーン・パス(GP)と呼ばれるコロナ健康証明を強制的に義務付け、職場に入る全労働者にその提示を求めると発表した。
 GP取得には少なくとも1回のワクチン接種ないしは48時間以内の検査陰性証明、またはコロナから回復したばかりであることが条件になる。違反した労働者は無給の停職または1,500ユーロの罰金、従業員が遵守しているか確認を怠った雇用者にも罰金が課される。イタリアでは12歳以上の人口の80%以上が2回の接種を受け、多くがGPを保持しているが、レストランや博物館、劇場や航空機、長距離列車を利用するにもGPが必要である。

 イタリアのコロナによる死者数は英国に次いで高く、2020年初頭のパンデミック発生以来13万人を超えている。また医療機関の調査では現在入院中のコロナ患者のほぼ全員がワクチン未接種者だとされる。GPの目的は言うまでもなく接種奨励と再度のロックダウン回避にあるが、施策発表当初は若者の接種が進んだ一方で、250万の労働者がまだ予防接種を受けておらず、接種を拒否している人の大半は50歳以上と言われている。これらの問題は労働者にも接種者と未接種者で分断をもたらしており、接種者のなかには未接種の同僚の存在を気にして、職場から離れようとする人さえいるとのことである。

 経済団体のコンフィンドゥストリアは積極的に接種賛成だが、各産業ではストライキや自宅待機を選ぶ労働者の増加で労働者不足に直面している。
 「イタリア全土の港湾労働者がストライキを宣言。運輸業界では、13万人の労働者不足の可能性もある。運輸・物流産業連合会のコンフェトラでは『40万人の運転手のうち30%がGPを持っていない。また外国人労働者の多くがEU未承認のロシア製スプートニクやその他のワクチン接種者であり、深刻な支障をきたす恐れがある』と述べている。農業分野の状況も同様で、東欧からの外国人労働者の大多数がスプートニク接種者である。警察官の20%が未接種と推定され、公共交通機関の労働者も10%から20%が未接種だとされている。」(ガーディアン紙)

 10月15日実施の強制措置に多くの労働組合が賛同する一方、反対している労働者もいる。多くの大都市でGPに反対するデモが行われているが、9日土曜日、1万人がポポロ広場に集まり首相官邸に向けてデモ行進を行っていたところ、ここに賛成派の極右政党「新しき力(Forza Nuova)」が混入、数百人が極右に扇動されたデモ隊は近隣のイタリア労働総同盟(CGIL)本部に向かい、ドアや窓を打ち破ってコンピューターや電話回線などを破壊する襲撃に及んだ。
 労働組合事務所に対する右翼の襲撃は、100年前の1921年にも創立直後のファシスト党により起こされており、翌年に政権を掌握してヒトラーと同盟を組み、第2次大戦を主導したベニート・ムッソリーニ党首を想起させるものとなった。
 こうして、極右ネオ・ファシストヘの非難が一斉に上がる中で、翌週16日の土曜日にはイタリア労働組合連盟(CISL)など多くの労働組合も参加して10万人に及ぶ抗議集会が開催され、極右政党「新しき力(Forza Nuova)」やネオ・ファシストの活動停止が叫ばれた。ドラギ首相も『労働組合は民主主義の基礎的防衛勢力であり、いかなる脅迫も許さない』と言明してファシストを非難、一般国民にもネオ・ファシストへの非難が強まっている。

 ガーディアン紙はまた「イタリアでのコロナ新規感染者は2020年11月に4万人に達した後、今年9月には再上昇の6千人を記録したが、現在は2700人に減少している。その中での強制措置である。他方、EU諸国内で人口当たりの感染が深刻なのは英国、バルト3国、ルーマニア・セルビア、モンテネグロなどがある。」と伝えた。
 またニューヨーク・タイムズは「米国は政府・民間企業労働者を含めて80%の接種を目指している。中国では10億人が接種を終えており、それ以上の動きはない。しかし今年8月、中国12都市ではコロナ感染に責任があるとみなされる未接種者への罰則が発表された。一方、民主主義国の多くは国民の健康と市民の自由、政治的現実のバランスを考慮して政府命令を抑制しており、フランスでもマクロン大統領がレストランや長距離列車にコロナ証明提示を試みたが、実際にはエッセンシャルワーカーへのワクチン義務付けにとどめている。」と報道した。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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