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No.647(2021/10/22)
ニューヨーク市が配達ギグ労働の改善に画期的保護法案、
英国に深刻なトラック運転手不足、軍隊が出動

ニューヨーク市が配達ギグ労働の改善に画期的保護法案

 9月23日のニューヨークタイムス(NYT)やニューヨークデイリーなど数紙がニューヨーク市で「食品配達労働者を画期的に保護する法案が市議会で承認された」と報じた。

 承認された法律は、配達時の最低賃金、労働者へのチップの確保、アプリや配送会社による労働者への課金禁止、支払いチップの配分説明義務、労働者のレストラン・トイレ使用許可、長距離や危険区域への配達拒否権などを定めている。しかし配達労働者が従業員でなく独立労働者(日本の個人事業主に相当)とする点に変わりはなく、労働災害や失業保険の対象にはならない。

 コーネル大学労働研究所のコンポス・メディナ部長は「配達労働者は低賃金、時には無給、非衛生で危険な職場環境、暴力にもさらされる。今回は基本的な保護法を定めたが、使用者との労使交渉を可能にする法改正などが必要だ」と言う。(コーネル大学広報 9月23日)
 またNYTは同大学の調査で「42%が賃金不払いや約束以下の賃金、50%が配達中の交通事故、75%が自己出費の医療、54%が強盗被害、30%が強盗の暴行被害を経験」と伝えた。パンデミックが広がる中で、食品配達需要への急激な高まりで、配達労働者数が増大している今、医療保険、強盗被害や交通事故補償などを含め、保護法制定が急務である。

 今回のニューヨーク市の法律は全国に先駆けたもので、カリフォルニアやマサチューセッツ州でのギグ労働者保護法の審議も未だ法制化されていない。
 昨年には、ギグ労働者を労働法適用の従業員と認定したカリフォルニア州法が、会社の反対による住民投票で無効とされ、最低賃金とわずかな諸手当を認めるだけとなったが、サービス労組の訴訟で裁判所がこれを憲法違反と判決した。しかし会社アピールがあり、現在係争中である。

 配達ギグ労働で使われる配達アプリについては、シカゴで配達アプリの不正に訴訟が起き、サンフランシスコではアプリ料金を15%以下に抑える法案が議会を通過した。
 他方、ニューヨーク市が定めたオンライン注文15%以下、広告費等には5%の上限、及び顧客情報(氏名や住所、Eメールや電話番号)のレストランとの共有義務については、ウーバーイーツやドアダッシュなどのアプリ会社が違憲だとして訴訟中である。多くの場合オンライン料金は30%と言われるが、レストランはそれも受けざるを得ない立場にある。

 こうした配達労働者の多くは移民で低所得の貧困層であり、パンデミックの中での配達、またハリケーンによる洪水のなか、半身水に浸かりながら配達する過酷さに同情と怒りが集まり、法律の制定を加速させた。彼らは時給8ドル程度で1日10時間以上の労働を余儀なくされ、強盗被害にも遭い、交通事故は自己負担である。レストランなど店舗のトイレ使用禁止も大きな問題で、用を足すために友人宅に遠出するか、トイレ利用料を支払うこともあると言う。

 なお、上記のギグ労働者の保護法については去る7月19日のJILAFメールマガジンでも紹介しており、ニューヨーク州における法律制定の動きを伝えている。
 同時にこれは日本のギグ配達労働者の問題でもあり、早急な実情調査と対策が必要である。

英国に深刻なトラック運転手不足、軍隊が出動

 9月28日のワシントン・ポスト及び29日のニューヨーク・タイムスなどが揃って標記事態を報道している。

 労働者不足はブレグジット(英国のEU離脱)以来表面化し、パンデミックが加わって深刻化したが、ガソリン供給やスーパーへの商品供給、在宅介護、食肉産業などに問題が顕在化した。

 中でもトラック運転手、特にガソリンを運ぶトラック運転手の不足は深刻で、英国各地のガソリンスタンドへのガソリン輸送が滞り、営業休止ないしは営業中でも長時間の車列待ち、ガソリンを買えずに出勤できない者もあり、タクシーや救急車も運行不能となる事態だ。
 WPは「トラックがガソリンスタンドに到着するニュースが出ると蜂のように車が集まり、数時間で売り切れ」とのパニックを伝えている。

 こうした事態に英国政府は外国人労働者への短期ビザ発給や退職運転手100万人への復職復帰要請などを打ち出したが、遂には10月4日、イングランド南部を中心に200人の軍隊が出動して民間トラックの運転代行に当たる事態に至った。31日間の要請期限は延長の可能性もある。」(10月4日 NYT) 

 トラック運転手、特に危険なガソリンを運ぶトラック運転手の労働条件は劣悪で、なり手が少ない。免許取得の難しさとは逆の低賃金に加えて道路渋滞など。5日間家族と離れての運転も稀でなく、その間の劣悪なシャワーやトイレ、食事、そして安全の問題もあるが、改善への取り組みは無い。老齢化する英国人運転手の跡を継いだ外国人運転手もブレグジットでEUへ帰国して、安定した仕事に就いており、3か月のビザで帰英する気配はない。またパンデミックによる在宅需要の急増から配達荷物に切り替えた運転手も危険の少ない現職から戻る状況にない。
 パンデミックで、賃金の80%を補助する政策が9月末に期限切れとなる今、商品の値上がりが家計を直撃する事態にある。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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