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No.646(2021/10/21)
USサッカー連盟が男女ナショナル・チーム選手に同等契約と合同団体交渉を提案

 9月14日のワシントン・ポスト、USAトゥデイなどがAP通信として「USサッカー連盟が男子及び女子ナショナル・チーム選手に対し同等待遇への交渉を提案。男女差の大きいワールド・カップ賞金を拒否して、同等実現のための男女合同の労使交渉を提案した」と報じた。

 US女子サッカー・ナショナル・チームは2019年3月、雇用機会均等法や市民権法に基づき、男女平等待遇を要求して訴訟を起こし、利用可能な運賃や宿泊ホテルなどの平等は確保したが、報酬などの案件は残されたままである。
 USサッカー連盟は「全ての関係者及び米国スポーツの将来について最善の策は男女双方のチームへの単一報酬制度だと確信する。今回の提案は男女選手に世界最高の報酬を確保しつつ、サッカー収入を合同で分配する制度を確立することにある。また、男女が平等でないワールドカップ(WC)賞金には同意せず、WC賞金平等化への重要ステップとならない協約にも合意しない。目標達成への最善の方策は男女選手会が合同協議の中で同一契約を結ぶことである。双方のチームが従来通りの別交渉を希望する場合は、交渉テーブルに他方が同席することで、完全な透明性を図りたい」と言明した。

 男子と女子の労働組合はそれぞれ別組織であり、米国労働法では合同の団体交渉や同様の労働協約を結ぶ規定はない。また現在、男子の協約は2018年に失効しており、女子は今年12月が期限である。
 サッカー選手の報酬は複雑で単純比較はできず、男子の完全出来高制に対し、女子には一定の基本年収と医療保険や退職金制度、半額の出産有給休暇がある。

 APによると「報酬については、2014年の男子の場合、WC登録選手一人当たり55,000ドル、それに16チーム予選(グループ・ステージ)を勝ち抜いて、8チームの準々決勝(ノックアウト・ステージ)進出への賞金430万ドルを加えると一人当たりは187,000ドルであった。女子の場合は2019年、登録選手総額862,500ドルと優勝賞金の253万ドルを加えて一人当たりは147,500ドルであった。」という。また2016年4月21日のニューヨークタイムス(NYT)は「男子が国内の年間20試合の全敗時には100,000ドル、全勝時は263,000ドルに対し、女子はそれぞれ72,000ドルと99,000ドル。WC優勝で男子390,000ドルに対し、女子は75,000ドル、2位は男子260,000ドルに対し、女子32,000ドル、3位は男子52,000ドルに対し20,000ドルとなる」と述べている。

 他方、FIFA賞金は2018年WCの場合、32チームに対し総額4億ドル、フランスへの優勝賞金は3,800万ドル。2019年の女子24チームへの総額は3,000万ドル、優勝した米国への賞金は400万ドルであった。このようにFIFA賞金は男女報酬に大きな差があるが、欧州や中南米での熱狂を見れば、格差解消に向けての男子報酬の削減は至難に思われる。米国の要求がFIFAをどのように動かすのか、注視していきたい。

 その米国だが、NYTは「従来男子よりも低かった女子サッカーチームの収入が2015年のWC優勝から男子を上回るようになり、収支差引きで女子660万ドルの利益に対し、男子は200万ドルを下回った」と伝え、2019年7月30日のロサンゼルス・タイムスなど数紙も「USサッカー連盟の発表ではここ数年、女子チームへの支払いが男子を上回った。2010年から2018年の間、サラリーとボーナスで女子には3,410万ドル、男子には$2,640万ドルが支払われた。この金額には女子だけの医療保険や退職金は含まれない」と伝え、事実認識が入り乱れている。

 また、2020年5月のロサンゼルス地裁では女子申立てが棄却されたが、理由は女子労組が男子協約にある競技ごと報酬を拒否して、基本給と諸手当増額を選んだためとされる。女子選手会はこれに異議を申し立て、2022年始めまでに再審理が行われる。

 こうした状況の中、9月15日のワシントン・ポストは「サッカー連盟の男女同等提案について、女子チーム代表のアレックス・モーガン選手が『女子チームの協定にいささかの譲歩があってもならないが、同等待遇の提案は歓迎する』と語った。また連盟が先週、男子選手会に対しFIFA賞金の任意による平等配分を要求したが、回答はない」と伝えている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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