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No.645(2021/10/8)
ワクチン接種義務付けに賛否が分かれる労働組合 ほか

ワクチン接種義務付けに賛否が分かれる労働組合

 9月9日、バイデン大統領は行政命令として、連邦公務員及び100人以上の民間企業を対象にコロナ・ワクチン接種の義務付け、ないしは週一回の検査証明義務を提案したが、違反企業には14,000ドルの罰金が課される。

 以上について、9月11日のワシントン・ポスト(WP)、ニューヨーク・ポスト、CBNニュースなどは、次のように伝えている。

 全米看護師連合(NNU 18万人)は大統領提案を歓迎する9月9日の声明で「行政命令はデルタ変異株への感染防止対策を一段と促進することになる。ワクチン接種は医療部門はじめ、教師や食品、小売りなどのエッセンシャルワーカーに不可欠なものだ。新型コロナウイルスは子供への感染率は低いとされていたが、デルタ株では高まった。多くの対策を講じながら、国民が一丸となって取り組まねばならない事態にある」と強調した。

 また、過去に接種は必要なしとしていた全米教員組合連盟(AFT 170万人)も容認に転じた。しかし、オレゴン州では警察官と消防士労組がマスク着用に反対して提訴した。

 労働組合も国民全体と同様、政党支持を伴って、安全と労働者の権利の狭間で主張が分かれる。公務員労組の中にも反対があり、新たな職場要件と規制には団体交渉が必要と主張する。「バイデン政権は9日の提案表明以前にも、各労組リーダーと事前協議を行ったが、今後もその努力を続けるという。」(WP)

 しかし全体的にはバイデン提案に賛成で、ナショナル・センターのAFL-CIOも「新型コロナウイルスの急速な感染拡大には迅速な行動が必要だ。対策強化も要望する。全ての人に接種が必要」と言明。AFTもデルタ変異株の出現で病床が満杯になる事態に、積極的な受け入れに転じた。

 一方、ワクチン接種に強く反対するのは警察関係労組で、ニュージャージー州ニューアーク市では警察官と消防士労組が市長の接種義務化に抗議デモを行っている。シカゴやリッチモンド地域でも反対しており、オレゴン州では州知事命令への差し止め訴訟も起こっている。
 「全米警察官協会(NAPO)のジョンソン役員は『警察官も多くのアメリカ人と同じで賛成、反対が分かれる。接種の義務化が必要としても、団体交渉がなければならない』と語る。」(WP)

 他方、「連邦法執行官協会(FLEOA)は9月9日の声明で「義務化命令は不必要で高圧的だ。行政命令は不安を持つ従業員を悪者にして、個人の健康に政府の関与を強制するものだ。協会は接種を奨励するが、75%が一回の接種を受ける任意の免疫が進む中で、強制でなく教育によるべきだ」とする反対を表明した。WPによれば、「ペンシルバニア州立大学のヘダー教授は『労働運動の中でも政治的に保守的なのが警察官、消防士労組で、共和党路線に傾きがちだ』と説明している。」

 そして共和党だが「共和党全国委員会は『ワクチン接種には賛成だが、義務付けは反対だ。バイデン大統領による憲法違反には、資金の無い中小企業や労働者に代わって、全国委員会が訴訟を起こす」と言明。各州の共和党知事も「ワクチン接種は各州の権限であり連邦政府にはない。民間企業を攻撃する今回の命令には対抗手段を講ずる」と述べている。

 これに対しバイデン大統領は「ワクチン接種やマスク着用に反対する知事はパンデミックの戦いの助けにならない。その排除には大統領権限を行使する」と言明した。全米のワクチン接種一回以上は75.3%に達したが、各州の接種率の差は大きい。また全米の感染者はワクチン接種開始時の今年1月の水準に再上昇している。

カリフォルニア州でアマゾン式労働の規制法成立へ

 9月8日のニューヨーク・タイムス(NYT)、及びロサンゼルス・タイムスなどが「カリフォルニア州上院がアマゾン社のトイレにも行けない過剰な作業割当の規制法を承認」と報道している。

 カリフォルニア州上院はアマゾン社における高い事故率と労働慣行への批判が強まる中、物流倉庫労働者の作業割当(コータ)の制限法を26対11の賛成多数で承認した。
 法案は法定休憩もなく、トイレにも行けずに健康と安全を脅かされる労働者を救済するものだが、さらにコータについての会社説明を定め、法律違反には訴訟も認めている。5月に下院を通過し、上院で若干修正された本法案は、下院の再承認を経て州知事の署名により発効する。

 法案を起草したゴンザレス下院議員は「アマゾン社で問題なのは生産割当の強化と罰則の厳しさだ。割当未達成労働者の人間的要素が無視されている」と述べ、またNYTは「労働専門家によれば法案は物流倉庫でのアルゴリズムによる作業管理に規制を導しつつ、割当方法を透明化させるものだ。アマゾンは作業をモニターしてスピードアップを図り、未達成者への罰則を強化することで、企業の優位性を築いた」との見解を紹介した。

 これに対し産業界からは「訴訟など高コスト負担の危険があり、1社の問題に産業界全体が巻き込まれる」との強い反対がある。アマゾン社は、「時間をかけて個人ごとの目標を練り直し、健康と安全も考慮に入れている。割当未達成の解雇は1%以下に過ぎない」と説明。労働組合グループによる「同社の重大事故は全国的にみて他社の2倍に達している」との指摘には、「安全設備の導入には、今年既に3億ドル以上を支出して取り組んでいる」と述べた。

 しかし、同社の労働慣行への批判は強い。去る4月、失敗した同社アラバマ州倉庫の労組結成投票では小売・卸売・デパート労組(RWDSU)が組織化に当たったが、全国労働関係委員会(NLRB)は会社に不当介入の疑いありとして再投票の可能性を示唆している。今回のカリフォルニア州法成立には全米トラック運転手組合(チームスターズ)が尽力したが、同社労組の結成には資金を惜しまないと言明している。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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