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No.639(2021/9/23)
メキシコGM工場の労働協約否決

 メキシコ労働省の発表によると、8月17日・18日の両日、メキシコのシラオGM工場(従業員約6,500人のピックアップトラックなどを製造する工場)で行われた4月締結の労働協約承認の再投票で、否決3,214票が承認2,623票を上回り、現行労組が締結した労働協約が公式に否決された。

 4月の労働協約については、アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づき、米国が投票に労働組合による改竄があるとの苦情を申し立て、再投票が行われたもので、メキシコ労働省、全国選挙機構、それに国際労働機関(ILO)も監視に当たった。
 8月19日のワシントン・ポストは「否決は同時にGM工場労組が所属するメキシコ労働総同盟(CTM)の否定をも意味する」と述べたが、CTMは過去1世紀にわたり政権を担った制度的革命党(PRI)の主要組織である。

 これに対しGM社は「生産体制は現行の労働協約により継続されるが、20日以内の労働省通告により、新労働協約の交渉が始まる。再投票が法律に則り高い投票率で、事故なく終了したことに感謝する。」と声明。また労働省は「再投票は労働組合の民主化と労働者の意思を尊重するメキシコ政府の公約を表明するもの」との声明を発表した。
 また8月19日のYahoo News は「全米自動車労働組合(UAW)が『今回の投票は米国、メキシコ両国にとってウィン・ウィンの関係を築き、より公平な企業競争への道を開くものだ』、またカナダのUnifor 労組も『投票は労働者の声の反映を目指すUSMCAの目的の沿うものだ』とする評価を伝えている。

 昨年締結されたUSMCAは従来のNAFTA(北米自由貿易協定)に代わるもので、トランプ前政権が貿易不均衡の是正を主眼に、特に自動車、酪農、鉄鋼、アルミ、知的財産の他、労働権に関する条項などを改訂、追加した。労働面ではメキシコに対し、ILO98号条約によるの結社の自由と団体交渉権の拡大を求め、労組選挙と労働協約には労働者の自由意志による無記名投票、違反の場合は輸入停止などの制裁を定めた。条約違反に関する今回の米国の苦情はUSMCA条項の最初の発動となった。
 その際にメキシコは労働法を改正し、2019年から2023年までに全労働組合の労働協約についての承認投票の実施を定めている。GM工場の再投票はこうした今後の大きな展開の先駆けとなるものである。

 またワシントン・ポストは「メキシコ自動車労働者の賃金は米国の8~10分の1と言われており、米国の雇用流出の大きな原因とされる。メキシコ労働組合での投票は数十年にわたり挙手によるもので、組合員の中には組合の存在を知らなかった者もいる。GM工場では今、新労働組織とし“ジェネレーティング・ムーブメント”が発足した」と伝えた。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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