バックナンバー

No.631(2021/7/14)
英国、台頭するオンライン労組とその活動

 日本経済新聞は6月28日、「正社員クラブ」もう限界、オンライン労組が台頭、世界の若者動かす、として具体的に次の2つのオンライン組合について報じている。

 英国でスタートアップ企業が立ち上げたオンライン労組「オーガナイズ(Organise)
」が勢力を伸ばしている。2019年末に8万人足らずだった組合員はこのコロナ下で130万人にふくらみ、数のうえでは英最大の労組ユナイトに肩を並べる。

 日本でも2020年2月、オンライン労組「みんなのユニオン」が結成され、中小企業や非正規の労働者のほか一部の大手企業の正社員ら2000人超が加入した。スタッフの竹永一樹氏(25)は都内のオフィスからビデオ会議システム「ズーム」をつなぎ、多い日は5社以上と団体交渉する。

 JILAFでは英語版メールマガジンでこれまでもいくつかの日本のオンライン組合の発足を報じてきたが、この英・オンライン労組「オーガナイズ」はかなり既存の労組とは様相が異なるため、このウェブサイトを訪ねた。

 「オーガナイズ」は役員をCEOとCTOと呼び、チームはこの二人に加え更に二人のCampaign Managerから成る。共同創設者はCEOのNat Whalley さんとCTOのBex Hayさんで二人共女性である。

 「オーガナイズ」は、職場でお互いに支え合う100万人以上の労働者主導のネットワークであり、職場生活を改善するために必要なツール、サポート、自信を提供することが彼らの使命であるとしている。
 さらに彼らのPrinciples (原則)として次のように述べている。
 「仕事や人生における様々な経験が私たちをより強くしてくれる。私たちは、家事や介護、社会的に価値のある様々なボランティア活動など、今日の社会では多くの種類の仕事が無報酬であり、正当に評価されていないことを認識している。また、私たちの中には、障害や病気のために働くことができない人や、退職した人がいることも認識している。しかしお互いに優しさと尊敬の念を持って接し、私たちにとってより良い仕事を実現するという共通の目標を信じている限り、私たちの状況にかかわらず、私たちには価値があり、誰でもチームに参加することができる」と謳っている。

 具体的には、服飾系ブランドのハラスメント問題を明らかにしてこれを改善すること、スーパードラッグの倉庫スタッフの賃上げを勝ち取り、何十万人もの人々が悪質な上司に挑むことなどを支援してきたとしている。

 実際に問題解決に取り組むことをcampaignと呼んでいるが、これは次のような手順を踏んで行われるようだ。
 問題意識を持った人が最初の数人の署名を得るためのセットアップから、支援者との戦術の計画、そして匿名での請願書のターゲット(経営側)への送付まで、「オーガナイズ」チームはすべての段階で一緒に行動するとしている。

 職場の問題を抱える人はオンラインで次のcampaignを選択できる。
①職場請願書(Workplace Petitions)
②公開質問状(Open Letters)
③職場調査(Workplace Survey)
 Web上でそれぞれタグに沿って作成を進めていくと、campaignを始める準備が整う。
職場の問題を共有した人々と「オーガナイズ」のスタッフが連携を取りながら交渉や話し合いを通じ解決にあたって行く。

 財政はあまり明確ではないが、「オーガナイズ」の組織を守るためにCore Memberになること、収入見合った寄付を要請している。例えば無職・一時解雇:月1ポンド、年収18,000ポンド未満:1.99ポンド、同30, 000ポンド未満3.99ポンド、同50,000ポンド以上:12.99ポンドなどとなっている。

 日本経済新聞によると「オーガナイズ」はスタートアップ企業が設立した「オンライン労組」とあるが日本の既存の労働組合とは形式を全く異にする。しかし、彼らのmissionやprinciplesなどを見る限りまさに労働組合の存在意義そのものではないか。

 紙面の都合上考察は避けるが日本初の無料オンライン組合を標榜する「みんなの組合」も発想・手法は「オーガナイズ」に近いのではないか。

 いずれにしても、働き方がますます多様化する今日、当然働く人のニーズも多様化する。日本の既存の組合も自らの足元の再点検を迫られることは確かだろう。

 失われた20年とも30年とも言われるこの間、経済は停滞し、それに伴い、働くものの経済状態は一向に良くならない。それどころか非正規労働はパート・派遣・契約社員等に加えギグワーカー、フリーランスの増加と働くものを取り巻く環境は困難化・複雑化の一途を辿っているように思える。現下のコロナ禍がこれに拍車をかける。

 救いを求める労働者に既存の組合はきちんと彼らの声に答えてきているのだろうか、賃金・雇用問題に限らず、各種ハラスメント、LGBTQ+ほか複雑かつ個別化する職場の問題に対応しやすい仕組みが「オンライン労組」であるとも言えるのではないか。

 既存の労働組合がこれら新しい流れにどう対応しようとしていくのか注視したい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.