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No.629(2021/7/6)
世界で年間約75万人の長時間労働者が脳・心臓疾患で亡くなる

~ILOとWHOが新しい調査結果を公表、コロナ禍による事態悪化も指摘~

5月17日、ILO(国際労働機関)とWHO(世界保健機関)は長時間労働と脳・心臓疾患(脳卒中と心筋梗塞等の虚血性心疾患)による労働者の死亡に関する研究結果を公表した。長時間労働を行う労働者数は国際的に増加しており、今日では約4億8千万人と推定され、これは世界人口の約9パーセントに相当する。これに伴い脳・心臓疾患で亡くなる労働者数も増加しており、2016年には74万5千人で、2000年からみると29%増加した。

 それぞれの疾患の状況をみると、週55時間以上働く長時間労働者について、2016年には、脳卒中による死亡者数は39万8千人であり、2000年から19%増加した。同じく心筋梗塞などの虚血性心疾患による死亡者数は34万7千人であり、2000年からは42%増えている。これらの死亡者のうち72%は男性である。さらに、45歳から74歳までの間に労働時間が週55時間を上回っていた労働者は、60歳から79歳の間でこれらの疾患による死亡のリスクが高まるとしている。ILOとWHOでは、労働者が週に55時間以上働くときには、週35時間から40時間の場合に比べて、脳卒中と心筋梗塞などの虚血性心疾患の死亡のリスクが高まる十分な根拠を得たとしている。

 今日の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)も事態をさらに悪化させることが懸念される。ILOは、労働者が働き方の不確実性や労働時間の長時間化により、心理的ストレスを含む健康被害を受ける可能性があるとする。さらにテレワークやICTの浸透、不安定労働やフリーランスの労働の急増は、労働時間の長時間化だけではなく、労働と休息の区分を曖昧にしているとする。そして各国政府は、これらの課題をきわめて深刻に受け止めて対策を行う必要があると指摘する。

 ILOは、このような状況に対応するため、各国の政府、使用者、労働者に対して、労働時間の上限やパートタイム労働などに関する国際労働基準の批准、実施のための政策を立案し実行するべきとしている。さらに、労使団体など社会的パートナーと協議のうえ、ディーセントワークの実現に向けた職場での法令遵守、そして、労働者の健康被害を避けるための労働時間の編成を促進するよう提案している。

 なお、ILOとWHOによれば、今回の研究は、脳卒中では83万9千人が参加する22の調査研究データ、心筋梗塞など虚血性心疾患では76万8千人が参加する37の調査研究データによりまとめられた。また、1970年から2018年の間に集められた世界154カ国での2300以上の国別、地域別あるいは国際的な調査結果を踏まえたものである。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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