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No.628(2021/6/9)
脱石炭政策への変換と全米炭鉱労組の要求

 4月19日のワシントン・ポスト紙は「全米炭鉱労組(UMW)はバイデン大統領による脱石炭・脱化石燃料政策を受けいれる代わりに、昨年失業の7,000名組合員を含めて、全組合員への雇用を確保するよう要求した」と報じた。

 バイデン大統領は幾つかの経済対策の一つに、2.3兆ドル予算のインフラ整備を掲げているが、道路、橋梁や送電施設の整備、電気自動車の開発、太陽光や風力発電などのクリーン・エネルギー開発を内容とし、同時に排出ガスを2030年までに2005年の50%以下に削減する目標を持つ。また法人所得税について、トランプ大統領が35%から21%に引き下げた税率を28%に引き上げる内容もある。

 これに対するUMWの要求は、再生エネルギー開発への大幅税制控除、失職労働者の雇用、老朽油田閉鎖費用の全額補助,廃止鉱山の清浄、そして化石燃料生産から出る二酸化炭素の地下貯蔵への補助継続である。

 この点についてUMWのセシル・ロバーツ会長は「失職労働者の雇用確保が何より大事だ。産業変換期にある労働者の将来は守らねばならない。」と強調した。

 このUMWの要求について、4月25日のスクラントン・タイムス・トリビューン紙は全面理解を示し、次の社説を掲げた。

 ペンシルバニア州の炭鉱産業は長年にわたる閉山の危機と戦ってきたが、無煙炭に切り替わってからも閉山が続いた。炭鉱閉山は数万人の労働者の職を奪うと同時に地域経済にも同様の打撃を与えた。バイデン大統領の家族も被害者である。2008年の生産量12億トンは2019年には7億600万トンに急減した。
 ペンシルバニア州だけで10万人を超えた炭鉱労働者は今、全米で5万人を下回るまでになった。天然ガスが石炭に代わるなど、傾向はますます強まりつつあり、天然ガスについてもバイデン政権は2030年までに化石燃料半減の政策を掲げた。

 最近、UMWも石炭産業の衰退を認めてバイデン政策を受け入れたが、失職する炭鉱労働者には新規エネルギー産業への雇用を創出するよう求めている。この選択は正しい。
 バイデン政権は再生エネルギー産業における大きな雇用の可能性を強調しているが、炭鉱地域にも風力、太陽光、水力資源が眠っている。政権はこのUMWの挑戦を受け入れて、エネルギー産業再建に鉱山労働者を活用して欲しい。

 日本においても、菅首相は2030年の排出ガス削減目標を2013年比46%とすることを発表した(4月22日 NHKニュース)。ニュースはまた、小泉環境相の「必要なのは再生エネルギーの導入」とする発言や経団連会長や商工会議所会頭が述べる「原子力発電の必要性、大規模な財政出動」の発言を紹介しているが、労働者の観点からは何の指摘もない。
 エネルギー産業の構造転換には、電力や自動車など関連業界の労働者に多大な影響が及ぶことになるが、雇用や労働条件、生活の保護に注目を怠らないようにしたい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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