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No.625(2021/4/30)
アマゾン・ベッセマーの組合結成投票で組合(RWDSU)敗北

 4月8日・9日に米国で全国労働関係委員会(NLRB)の監督の下、アマゾン・アラバマ州ベッセマーのフルフィルメントセンターの組合結成投票の開票が行われた。昨年末から開始されたアマゾン・ベッセマーで組合結成をはかる運動は、全世界的に注目された。米国では組合結成は全従業員による一票投票で多数を取らなければ、認められない。日本のように2人集まれば組合結成が出来るわけではない。もし組合結成投票を勝利し、組合を結成できれば、その力は大きい。そのためほとんどの企業は組合結成投票の準備があると知れば、コンサルタントを雇用し、その動きと徹底的に闘う。 アマゾンにおいても同じことが繰り返された。施設中に「組合、ノー」のポスターを張り、職員に反組合のセミナーへの出席を強要し、ウェブやSNSを活用したプロパガンダなどを徹底的に行った。この投票はそもそも従業員のアマゾンの厳しい労働条件に対する不満から始まっていた。NHKニュースによると、労働組合の結成を呼びかけた従業員の1人、ダリル・リチャードソンさんいわく、巣ごもり需要の伸びで業務が多忙なうえ、勤務管理にも行き過ぎを感じており、「勤務時間が厳格に管理され、トイレに行く時間も計測されている」とのことだ。労働者の不満の背景には、アマゾン社長のべゾス氏が世界有数の富豪という事情への反感もある。
 開票は当初から「組合、ノー」の票が圧倒的で、4月9日の最終集計では、「組合、ノー」の票が1798票、「組合、イエス」の票が738票だった。この結果に対し、4月16日、組合は「今回の投票結果は無効とすべき」(RWDSUウェブサイト)とし、NLRBに異議を申し立てた。その意味で、アマゾンに労組を作る活動は終わったわけではない。

小売・卸売・デパート労組(RWDSU)の次の手

 RWDSUが主導してきたアマゾン・ベッセマーに組合を作る活動はとりあえず敗北したが、「アマゾンに彼らの行動に対し責任を取らせる」と語り、まだまだ意気軒昂である。4月9日出されたRWDSUの声明によれば、「アマゾンの使用者によって混乱、強制、そして罰則に対する恐怖の雰囲気が作り出され、これによってアマゾンは従業員の選択の自由に介入した」と指摘し、「全国労働関係法第7章による組合結成の自由で公正な投票の実施に違反している」としている。RWSDUは、アマゾンの行動に対して異議をとなえ、関連する不当労働行為に対しNLRBに対して提訴するとし、これは4月16日に行われた。
 だが約6000人の従業員中約半分しか投票せず、その内738人だけが組合結成に賛成したという事実、圧倒的多数は組合結成に賛成しなかったという事実はどう説明できるのだろうか。
 「アマゾンは社員になったその日から健康保険が適用される会社として、これまで私が経験したなかで唯一の会社だ」と社員のラボネット・ストロークスさんはNYタイムスに語った。彼女は組合のオルガナイザーたちを嫌いという。なぜなら倉庫で働く労働者のほとんどは黒人なので、彼らはベッセマーの組合投票をBLM(黒人の命は大切)運動の延長としているからだ。「だが組合投票はアフリカ系アメリカ人の問題ではない」と彼女自身黒人のストロークスさんは言う。」結局「ベッセマーの組合問題は、組合の売り込むものが、労働者の味覚に合わない所にある」とWSJ紙は結論付けている。
 他方、ロイターの記事を読むと、組合はアマゾン側の戦術に負けたとの印象を持つ。例えば、当初組合は投票の有資格者を1500人に絞ろうとしたが、アマゾンは拡大を主張したと言う。その理由は、「会社側は、労組結成投票で選挙人数を増やす提案をする。その理由は過半数の獲得を難しくする」からだと言う。また、郵便投票も投票数を少なくすることに貢献したそうだ。(ロイター4月9日「分析-アマゾンの今回の勝利は労働運動が直面する厳しい現実を示す」)

組織化の権利を擁護する(PRO)法案は下院を通過

 逆に、アマゾンでの組合結成投票によって強調されたのは、米国の組合結成要件が余りに厳しすぎるという事実である。このシステムを変える努力もこれまで行われてきた。それがPRO法案である。この法案は3月に下院を通過し、上院に来ているのだが、審議は行われていないようだ。この法案は、組合結成投票でアマゾンが取った多くの戦術を無効とするばかりか、ギグ労働者にも組織化の権利を与えるものである。民主党の代議士アンディ・レビンは言う。「アマゾンの勝利はおそらく反撃をくらう。彼らはPRO法案を通す運動に火をつけたからだ。」(ロイター 4月10日「失敗したアマゾンの組合作りの努力は米国労働法のアップデートを呼び起こす」)歴史は常に皮肉である。アマゾン・ベッセマーの敗北は逆に米国労働法改革のきっかけになるかもしれない。米国労働運動からしばらく私たちは目を離せない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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