バックナンバー

No.621(2021/3/16)
米国アマゾンで組合結成なるか?4月には結果判明!

 ビッグテック企業GAFAの一角を占めるアマゾンは、1994年に書籍のオンラインストアから出発、その後あらゆる商品を取り扱うようになり、今やウォルマートに次ぐ全米第2位の事業者となっている。ここまでは良く知られている事実だが、この会社は組合忌避でも有名で、ドイツなど数か国を除いて、組合はない。ところが今、その本拠地米国で組合が結成されるか否かの瀬戸際の状況にある。

 アマゾンで組合結成の動きは過去にも散発的に見られたが、昨年夏からアラバマ州ベッセマーにあるアマゾンのフルフィルメントセンター(倉庫だけでなく物流全般を取り扱う大きな施設)で大規模な組合結成の動きが起こっている。この施設では約6000人が働いている。

 デイリーメール紙によると、「組合結成を呼び掛けた従業員の一人、ジェニファー・ベーツ(48歳)は時給15.3ドルでセンターで働いている。彼女の作業は洗濯石鹸や被服などを箱から出し、アマゾンの箱に詰め替えることで、昨年5月入社後、10時間シフトのほとんどが立ち作業である。さらに昼食時間に問題があり、30分の休息時間内にカフェテリアまで行き、昼食を済ませて戻ってくるのは、14のサッカー競技場分のサイズの中では大変なことだ・・・うまく行けば良いが、休息時間内に戻れないとアマゾンは彼女の賃金をカットする。そして最悪の場合は解雇する。こうした状況に我慢できなくなったジェニファーと仲間たちは昨年の夏に全米小売り・仲買・デパート労組(RWDSU)と連絡をとった。」
 RWDSUは、全米食品商業労組(UFCW)に加盟しており、ベッセマーのすぐ近くのバーミンガムにあるUFCWの事務所が直ちに動いたようだ。The Verge紙によれば、「10月20日近くの食肉工場や倉庫の組合員たちがベッセマーのフルフィルメントセンターにやって来て、ゲートの所で従業員に話しかけた。1か月後、彼らは3000名の組合賛同署名を集めた。」
 ジェニファーは、「アラバマの食肉製造業労働者を代表する組合が、休息時間の増大を勝ち取り、アマゾンが容易に労働者を解雇できないようにし、さらに賃上げまで実現することを望んでいる・・・我々が声をあげられない時、彼らが声をあげてくれる」と語った。(デイリーメール紙)

 米国では通常、組合結成には、政府の独立行政機関である全国労働関係委員会(NLRB)が監督し、全従業員を対象とする投票が行われ、過半数を得ることで可能となる。昨年夏のジェニファーらの相談をきっかけに産別組織(今回のケースではRWDSU)がアマゾンで労働組合を結成させようと動いた。ベッセマーのセンターで働く労働者から3000名を超える同意書を集め、これをNLRBに持ちこんだ。NLRBはそれを基に組合結成承認投票を行えると判断(通常30%を超える署名を集めれば投票を実施できる)し、1月15日に会社に選挙実施を通告した。この後にも困難があった。

 組織化が開始されたことを知った経営側が大量の資金を使い、組合結成の試みを失敗させようとするのはよくあることで、その為のコンサルタント会社も米国には無数にある。コンサルタントの指導で会社は大規模な反組合キャンペーンを行い、それで組合が負ける例も多い。アマゾンもまた、このような米国流の反組合キャンペーンに今乗り出している。

 フルフィルメントセンターのいたる所に反組合的なバナーやポスターが貼ってあると言う。例えば、写真のように、センターの入り口に「なぜあなたがタダで手に入れているものに金を払うのか」というバナーが張り出されている。そして職員は強制的に会社が招集する集会に出席を強要され、反組合的な資料を見せられたり、組合を否定するようなメッセージを携帯に送られたりしている。さらに「組合費は払わなくても!」というウェブサイト(http:doitwithoutdues.com)も立ち上げられ、会社側は組合費に焦点を当てて組合攻撃をしているようだ。これに対し、RWDSUが出来ることは職場の外で「組合を作ろう」と呼びかけることだけだ。

 しかし組合側も負けてはいない。NLRBは今回コロナ禍の中の投票であり、組合結成投票を郵便投票で行うとした。アマゾンはこれに激しく抵抗したが、NLRBは郵便投票の主張を曲げなかった。一般に会社施設内で投票が行われると、会社は最後まで労働者に反組合的な影響を与えられるが郵便投票はこのリスクを減らせ、組合側に有利になると言われている。1月15日、NLRBは予定通り2月8日から郵便投票を開始すると発表し、アマゾンの訴えを却下した。RWDSUアップルバウム委員長は「コロナ禍の中、会場での投票を主張するアマゾンの労働者の健康と安全無視」を糾弾し、「アマゾン労働者は組合結成に向けた戦いでまた一つ、勝利を収めた」と述べた。(RWDSUウェブサイト)

 なぜアマゾンはこれほど組合を忌避するのだろうか。それはベッセマーの施設は約6000名の労働者が働く巨大な施設であり、ここで組合が出来ると、連鎖反応的に全米150以上あるフルフィルメントセンターで組合結成が相次ぐ恐れがあるからだろう。UNIに加盟するRWDSUは米国でも中庸な組合で団体交渉を重視する。日本のUAゼンセンと交流があり、アップルバウム委員長は幾度か来日している。アマゾンで秩序ある労使関係を作る良きパートナーとなり得る産別組合である。今回の動きがアラバマ州という米国の中でも保守的な地域で起こったことは重視すべき点である。BLM運動からバイデン政権誕生へと続く米国の中で、地殻変動が起こっていると言えるのかもしれない。アマゾンで組合結成が成るか否か、開票はNLRBの下で3月30日に行われる。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.