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No.618(2021/2/16)
バイデン新大統領始動、対するシカゴ教員組合

 1月25日のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は「バイデンに対するシカゴ教員組合」と題して、面接授業の再開に反対するシカゴ教員組合(CTU)を批判して、以下の社説を掲載した。

 シカゴ教員組合の教師たちは昨日、バイデン大統領の学校再開計画を拒否してリモート教育を無期限に続けることを決定した。組合は児童を人質にして、より多くの金銭を要求している状況にある。

 シカゴ教育委員会は2月1日からの対面授業による学校再開を目指して、25日の出勤を命じていたが、71%のCTU組合員は学校が安全になるまでの対面授業再開に反対投票した。
 この間、学校区はクラスに空気清浄機を設置、ベンチレーション・テストを実施するなど、クリーニングと迅速なテスト体制を整えてきた。来月には教師へのワクチン接種も始まる予定で、教師が復帰を拒否する理由はない。

 この点についてシカゴ公立学校の関係者は「昨秋以来、130以上の私立学校と宗教学校、2,000以上の幼児ケア施設で授業が再開されており、公立学校でも同じ措置が取られねばならない。インターネット授業が不可能な生徒も多い。また最近、黒人やラテン系の生徒を中心に退学が多数見られるようになっている。」と述べている。

 学校区は組合員投票の結果を受けて、混乱を避けるため教師の出勤を28日に延期したが、不条理な要求を飲むことは、別の要求を生む。2019年の労働協約がストライキを禁じているため、教師たちは出勤拒否をストライキと呼ばないが、これは事実上のストライキである。教員組合は「学校区が無断欠勤で教師を処罰すれば、学校区は出勤拒否の責任をも負うことになる」主張しているが、拘束状態にある生徒が教師に同じことを言うとしたら、どうなるのだろうか。
 バイデン大統領は学校再開に向けて$1億3,000万の予算措置を要求しているが、生徒の学校復帰を阻む真の障害は自分勝手な教員組合にある。

 以上が使用者側を代弁することの多いWSJの社説要旨だが、同日のワシントン・ポスト紙は「バイデン氏、学校閉鎖を主張する教師を責めるつもりはない」とする記事で、以下の様に述べている。

 バイデン大統領はホワイトハウスの記者会見で「学校再開は複雑な要素をはらんでいる。また教師全員がクラスに戻りたいとの願いも分かっている。シカゴについても学校区はベンチレーション・システムの整備、充分な保護設備、コロナウイルス検査体制の確立を優先的に行う必要がある」と述べ、「反労働組合の人は労働組合が悪いというだろうが、物事は複雑だ。要点は生徒を安全に学校に戻すにはどうすればよいかだ」と語りつつ、CTU支持の明確な表現はしなかった。

 一方、シカゴ公立学校関係者は「数百万ドルを使ってその準備をしてきた」と主張するが、教員組合は「学校の安全は未だ不十分」と反論している。そして実際問題、全国の多くの学校区で対面授業には不十分な安全対策が指摘されている。バイデン大統領はまた「多くの母親や父親が在宅で子供の面倒を見ている。こうした数百万の人が職場に戻ることの利点も大きい」と付け加えた。

 以上が1月25日付ワシントン・ポストの記事だが、バイデン新大統領は1月20日の就任直後に地球温暖化防止のパリ協定への復帰、世界保健機関(WHO)への復帰を始めとして、トランプ政策変更への数多くの事案を進めている。
 また労働面でも、「労働裁判所である全国労働関係委員会(NLRB)についてトランプ任命の議長、副議長を任期を待たずに解任、さらにトランプによる上司の恣意による解雇・採用を認めた人事権の撤廃、および団体交渉事項制限の撤廃、新たには、労働者の安全衛生保護対策の2週間以内の立案命令、有給病気休暇の拡充検討などを発令している。」(22日、ワシントン・ポスト)

 こうした間、バイデン新大統領はシカゴ教員組合についての支持を明確にせず、行政当局の努力も評価したと思われる態度には、国民の団結を訴え、公平に物事に対処しようとする配慮もうかがわれる。今後の手腕に大きく期待するところである。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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