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No.617(2021/2/16)
ILO、「在宅形態の労働者」についての報告書を公表
~これからのテレワークなどへの提言も~

 1月13日、ILO(国際労働機関)は、今日のテレワークの他、家内労働やデジタルプラットフォーム労働も含めた在宅形態の労働者に関する報告書(「目に見えない労働からディーセントワークへ」“Working from home. From invisibility to decent work”)を公表した。この報告書は、世界の在宅形態の労働者について、規模と動向、形態と状況、労働条件と法的保護などの調査と分析を示し、あわせてディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向けた提言を行っている。

 この報告では世界の在宅形態の労働者数の推計を行っている。2019年の労働者数は約2億6千万人、就業者全体の7.9%である。このうち女性は約1億5千万人で、在宅就労の労働者全体の56%を占める。また、途上国ではインフォーマル経済のなかで就業する労働者も多く、「目に見えない労働」となりがちである。そして、2020年のコロナ禍では、最初の数ヶ月で在宅形態が労働者全体の五分の一ほどに上昇したと推計され、年末までには相当に増えた可能性があるとする。

 報告書は在宅形態の労働者を3つのタイプに分類する。第一はテレワーカーであり、事業所から離れた自宅などで、情報通信技術を用いて通常の業務を継続的に行う。第二のタイプは、工業の下請けなどの家内労働者である。大半が手工芸や刺繍、電子部品の組立てなど自動化が難しい製品の生産に従事している。第三のタイプはデジタルプラットフォームの労働者である。サイバースペースで受注し業務するもので、コンサルティングや編集などの専門的な業務のほか、データ・アノテーション(人工知能に情報を組込む等の業務)なども含まれる。

 労働条件の面では、通常の労働者に比べて収入が大幅に低いことが多い。高技能職であっても、平均的にみると、通常の労働者に対して英国で87%、米国で78%であり、インドやアルゼンチンでは50%程度である。職業における安全や健康の面でも高いリスクがみられる。しかし、在宅形態の労働者に対する各国の法制度による保護は不十分で、独立請負事業者に分類して労働法制の適用外とするものも多い。

 報告書はこのような現状について、労働者を「見える化」し保護を強めるための提言を行っている。テレワーカーでは、労働生活と私生活を区分する権利の導入、社会心理的なリスクの緩和などを求めている。家内労働者については、文書による契約、社会保障の適用などによる保護を拡大することが必要とする。デジタルプラットフォーム労働では、就業者が創出したデータを通じての労働条件の監視、公正な賃金のためのツールの必要性を述べている。

 報告書は、在宅形態の労働者は世界に多く見られ、今後もその重要性が高まるものととらえている。しかしながら、現状では、この問題に関するILO条約(第177号・在宅形態の労働条約・1996年)の批准が10か国に留まっていること、包括的な政策がある国もほとんど見られないこと等から、各国における対策の強化を呼びかけている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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