バックナンバー

No.616(2021/1/29)
グーグルで労組結成

全世界でメディア大きく取り上げる

 今年1月4日「ニューヨークタイムス」紙に、米国グーグルと親会社アルファベットで労働組合(AWU =Alphabet Workers Union)が結成されたことが発表された。AWUには、同社で働く正社員、契約労働者226名が参加した。組合員でソフトウェア・エンジニアのジェフ・スナイダー氏は言う。「我々従業員をますます弱く、取り分を少なくしているフルタイムとパートタイムというカースト制度を取り払う組合が必要だ。」(AWUホームページ) 「組合はそのサイズからして従業員の労働条件を交渉することはできないが、会社に対し商品開発において倫理のプライオリティを高くすること、職場で嫌がらせなどがあった場合より真剣に取り上げさせること、彼らが言うにはアルファベットで働く労働者の約半分をなす非正規、契約社員の権利を守ることで圧力をかけることが出来る」(ファイナンシャル・タイムス1月5日)。
 アルファベットで組合が結成されたとのニュースは衝撃的で、各国で様々に報道された。

CWAのテック労働者組織化の歴史

 アルファベット労組はCWA(全米通信労組)に属している。CWAは電話会社(AT&T)の組合として出発し、今ではテレコムは勿論アメリカン・エアラインや大学など様々な職種を含む、日本では情報労連に相当するような複合組合で、70万人の組合員を擁している。 CWAは権利を守る姿勢でも有名で2011年に携帯会社ベライゾンで労働協約締結を要求し16日にわたるストを行い、調停に持ち込んだ歴史を持つ。CWAはテレコムから出発しているという点で、テック労働者の組織化には非常に熱心である。テック労働者の組織化という点では、1990年代末に結成されたワシテクという組合が最初である。 米国では、組合は産業、職種別に労働者を組織し、それぞれの領域で組合支持が過半数を握ると政府機関である全国労働関係委員会(NLRB)がその単位で選挙を行い、これを乗り切ると団体交渉権を持つ組合として認められる。 そのため組織化が開始されたことを察知した経営側は大量の資金を使い、組合結成の試みを失敗させようとする。その為のコンサルタント会社も多い。これではなかなか労働組合が結成できないので、法律をもう少し組合に有利に変えられないか、というのが米国労働運動の悲願である。 現在もこれを目的として法案(PRO法案:Protecting Right of Organizeの略で、労働組合を作りやすくし、併せて組合作りを妨害する使用者を罰する法案)を通そうと、労働側の議員と共に組合側は努力しており、昨年下院を通過している。 ワシテクは、個人単位の労働組合であり、この困難な過程を飛ばし、労働者の組織化を目指した。ワシテクを創設したマークス・コートニーは、IT産業で働く労働者を組織し、マイクロソフトの契約労働者の問題を取り上げて成果を上げ、600人から始めたワシテクを2000人まで引き上げた。ワシテクはワシントン州技術労働者連合の略で、CWA第37083支部に属していた。団交権は無くても、組織化、トレーニング、共済、政治活動などで成果を上げたと言われている。 これに対し昨年1月に創設されたデジタル労働者組織化キャンペーン(CODE-CWA)は、問題が多いテックやゲーム部門での組織化に力を入れ、テック労働者やその組織者など誰でも入れる組織だが、究極的には団体交渉権を持つ労働組合の組織化を目指す組織であり、CWA本部が作ったものである。 実際ここ数年テック労働者からは様々な問題が噴出していた。性的嫌がらせ、年齢差別、不平等な賃金、クランチタイム(長期にわたる超過勤務、過重労働)、非正規問題などテク企業に内在する問題がマスコミを通じて報道されることが大きく増えた。これを組織化につなげる目的でCODE-CWAは作られたのである。 昨年3月にはアプリ製造会社であるグリッチで90%以上の賛成をもって組合結成に成功している。ここでは経営側の協力も得ているわけだ。そして今回のアルファベット労組の結成と、CODE-CWAは今流れに乗っている。(www.code-cwa.orgを参照)

アルファベット労組の展望

 グーグルの人事部長であるカーラ・シルバースタイン氏は、「勿論我が社の従業員は労働権をもっており、これは我が社として支持している。しかし我々が常に行ってきたように、我々は引き続き直接すべての従業員に関与する」と述べた。また、2019年にグーグルは反労組のコンサルタント会社IRIコンサルタンツと契約している。しかし1月4日の労組結成後組合員数は400名以上に拡大した。 (「ワシントンポスト」紙1月4日)2018年には2万人以上の労働者が同社幹部の性的嫌がらせ事件に対する対処が甘すぎるとストに入った。2019年11月には4名の労働者を解雇し、3名は不当労働行為としてこの件を全米労働関係委員会(NLRB)に訴えた。2020年12月、NLRBはグーグルに対し労働法違反で告発状を出した(「ニューヨークタイムス」紙2020年12月2日)。 これらのことからも、明らかにグーグル内で労働者の不満は高まっていると考えられる。グーグル/アルファベットは急成長し、現在では26万人を超える労働者が働いている。今回の組合結成は数こそ小さいが、確実に波及効果があると言える。グーグル内の一般的不満を組織的な活動に転化することができるか、将来団体交渉を行う組合まで成長するか、アルファベット労組(AWU)の可能性を今全世界が注目している。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.